🛡防災の備えメモ

障害のある人の防災と配慮|種類別の備えと個別避難計画

障害のある人の防災を、防災士マモルが配慮をもって解説します。視覚・聴覚・肢体不自由・知的発達・内部障害など種類別の配慮、避難行動要支援者名簿や個別避難計画への登録、必要な備えのチェック表まで、今日からできる一歩を丁寧にまとめました。

本記事はプロモーションを含みます。

「災害のとき、家族や自分はちゃんと避難できるのだろうか」。障害のある方やそのご家族、支援に関わる方から、私はこうした不安をよく聞きます。

私は防災士で、二児の親でもあります。日頃から地域の備えに関わるなかで強く感じるのは、障害といっても一人ひとり必要な配慮はまったく違うということです。同じ「視覚障害」でも、見えにくさの程度や慣れた環境かどうかで、求められる支援は変わります。だからこそ、誰かが用意した正解をそのまま当てはめるのではなく、ご本人の状況に合わせて一つずつ整えていくことが大切だと考えています。

この記事では、障害の種類別の配慮の考え方、避難行動要支援者名簿や個別避難計画への登録、そろえておきたい備え、そして地域とのつながりまでを、できるだけ具体的にお伝えします。脅したり急かしたりするためではありません。今日から無理なく踏み出せる一歩を、一緒に見つけていけたらと思っています。

なお、医療的ケアやお薬、医療機器の停電対策にかかわる判断は、必ず主治医や医療機器メーカー、電力会社、お住まいの自治体(保健福祉の窓口)にご相談ください。名簿や個別避難計画、福祉避難所の仕組みは自治体によって異なるため、最新の内容はお住まいの自治体でご確認ください(本記事の最新確認日は2026-06-27です)。命にかかわる緊急時は119番に通報してください。

障害のある人の防災はなぜ配慮が必要なのでしょうか?

災害時は情報の伝わり方や避難の方法が変わり、ふだんできていたことが難しくなる場面があるからです。

たとえば停電すると、音声案内や電動の医療機器が使えなくなることがあります。エレベーターが止まれば、車いすの方の移動は大きく制限されます。放送だけで避難情報が流れると、聞こえにくい方には届きにくくなります。こうした「ふだんとの違い」が重なるのが災害時です。

ここで気をつけたいのは、障害のある方を「支援される側」と一括りにしないことです。多くの方はふだんご自身の工夫で生活されています。災害時に必要なのは、その工夫が通用しにくくなる部分を、あらかじめ補っておく準備だと私は考えています。人によって必要な配慮は異なるので、ご本人やご家族の状況を起点に整えていきましょう。

内閣府は、自ら避難することが難しい方を「避難行動要支援者」と位置づけ、市町村に名簿の作成を求めています(避難行動要支援者の避難行動支援に関すること・内閣府)。公的な仕組みと、ご家庭での備えの両輪で考えていくのがよいでしょう。

障害の種類によって配慮はどう変わるのでしょうか?

情報の受け取り方、移動の手段、安心できる環境が障害ごとに異なるため、配慮の重点も変わります。

ここでは代表的な区分ごとに、考え方の例を整理します。あくまで一例であり、同じ区分でも必要な配慮は人によって異なります。ご本人と相談しながら調整してください。

視覚に障害がある人への配慮

見えにくさを補うため、音声での情報提供や、手引きによる誘導が役立つことがあります。

避難の声かけは「あちら」ではなく「右に3歩」のように具体的に伝えると伝わりやすくなります。手引きをするときは、支援する人の腕やひじにつかまってもらい、半歩前を歩くと安心される方が多いです。慣れない避難所では、トイレや出入口までの経路を一緒に確認しておくと負担が減ります。白杖や音声機器の予備、点字の連絡先メモなども、準備の選択肢になります。

聴覚に障害がある人への配慮

放送が聞こえにくいため、文字や光、身ぶり、筆談での情報提供が助けになることがあります。

スマートフォンの文字表示や、紙とペンによる筆談、ホワイトボードがあると意思疎通がしやすくなります。避難情報は音声だけでなく、文字で伝わる手段を複数持っておくと安心です。手話を使う方には、地域の手話通訳や要約筆記の支援につながれるよう、ふだんから相談先を確認しておくとよいでしょう。光で知らせる警報装置を使っている場合は、停電時の代替も考えておきたいところです。

肢体不自由のある人への配慮

移動の手段が制限されやすいため、避難経路や運び方、車いすの取り扱いを事前に決めておくことが大切です。

階段しかない経路では、複数人での介助が必要になる場合があります。誰が、どのように手伝うのかを、ご近所や支援者と前もって話し合っておくと、いざというとき動きやすくなります。車いすやその予備の部品、移乗を助ける用具、簡易な担架の代わりになるものなど、状況に応じた準備を検討してください。避難所では段差や通路の幅も確認しておくと安心です。

知的障害・発達障害のある人への配慮

分かりやすい情報と、落ち着ける環境づくりが安心につながることがあります。

避難の流れを絵や短い言葉で示したカード、写真で場所を伝える工夫が役立つ場合があります。急な変化や大きな音が苦手な方には、耳栓やイヤーマフ、見慣れた持ち物、パーティションで仕切られた静かな場所などが助けになることがあります。ご本人が安心できる方法をいちばん知っているのはご家族や支援者です。ふだんの工夫を、災害時にも続けられる形で準備しておきましょう。

内部障害・医療的ケアが必要な人への配慮

お薬や医療機器、予備の電源の確保が欠かせない場合があり、専門家への相談が前提になります。

人工呼吸器やたん吸引器、在宅酸素などを使っている場合、停電は大きなリスクになり得ます。予備のバッテリーや非常用電源、機器の手動操作の方法、停電時の連絡先を、主治医や医療機器メーカー、電力会社、自治体(保健福祉の窓口)とあらかじめ相談しておくことが重要です。お薬は数日分の予備とお薬手帳、内部障害があることを周囲に伝える手段も準備しておきたいところです。これらの判断は自己判断せず、必ず専門家にご確認ください。

障害の種類別の配慮・備えチェック表はどう使えばよいでしょうか?

ご本人の状況に近い項目を選び、できているもの・これからのものを仕分けする使い方がおすすめです。

下の表は配慮の重点と備えの例をまとめたものです。すべてをそろえる必要はありません。優先順位は人によって異なるので、ご本人と相談しながら選んでください。

区分 配慮の重点 備えの例
視覚障害 音声情報・具体的な声かけ・手引き 白杖の予備、音声機器、点字や拡大文字の連絡先メモ
聴覚障害 文字・光・身ぶり・筆談 筆談ボード、文字表示できる端末、予備の電池
肢体不自由 移動手段・避難経路・介助の役割分担 車いすの予備部品、移乗用具、複数人での介助の取り決め
知的・発達障害 分かりやすい情報・落ち着ける環境 絵や写真のカード、耳栓やイヤーマフ、見慣れた持ち物
内部障害・医療的ケア 薬・医療機器・予備電源(要・専門家相談) 数日分の薬とお薬手帳、予備バッテリー、停電時の連絡先
共通 援助を求める手段・自分の情報を伝える手段 ヘルプカード、コミュニケーション支援ボード、緊急連絡先

医療機器や予備電源にかかわる項目は、必ず主治医や医療機器メーカー、電力会社、自治体に相談したうえで決めてください。地域の防災訓練でこの表を見直すと、抜けに気づきやすくなります。

避難行動要支援者名簿や個別避難計画には登録した方がよいのでしょうか?

自力での避難が難しい場合、名簿への登録や個別避難計画づくりは支援につながる選択肢になり得ます。

避難行動要支援者名簿は、災害時に支援が必要な方の情報を、市町村があらかじめまとめておく仕組みです。平成25年の災害対策基本法の改正で、市町村に作成が義務づけられました。さらに令和3年の改正で、一人ひとりの避難方法を具体化する個別避難計画の作成が、市町村の努力義務となっています(避難行動要支援者の避難行動支援に関すること・内閣府)。

個別避難計画は、誰が、どの経路で、どこへ避難するのかを、ご本人や支援者と一緒に整理しておくものです。内閣府と消防庁の調査では、令和7年4月1日時点で名簿の作成は全1,741団体で完了し、個別避難計画もこれまでに合計約145万人分が作成されています(名簿及び個別避難計画の作成等に係る取組状況の調査結果・消防庁)。取り組みは年々広がっています。

名簿への情報提供や計画づくりは、自治体や地域包括支援センター、相談支援事業所が窓口になります。仕組みや対象は自治体によって異なるため、まずはお住まいの自治体に相談してみてください。登録するかどうかはご本人やご家族が決めることで、強制されるものではありません。

個別避難計画はどのように作っていけばよいのでしょうか?

ご本人の状況を起点に、避難のきっかけ・経路・支援者・行き先を一つずつ具体化していくとまとめやすくなります。

まず、どの情報が出たら避難を始めるのかを決めます。次に、自宅から避難先までの経路で、段差や階段などの不安な箇所を洗い出します。そのうえで、誰が支援してくれるのか、連絡はどう取り合うのかを話し合います。医療的ケアが必要な場合は、機器や薬をどう持ち出すかも計画に含めますが、その内容は主治医や医療機器メーカーと相談しながら決めてください。

計画づくりには、福祉や防災の専門職、ご近所、民生委員などが関わることがあります。一人で抱え込まず、相談支援事業所や地域包括支援センターに声をかけてみましょう。厚生労働省も、要配慮者への支援について自治体向けに考え方を示しています(高齢者・障害者等の要配慮者に関する資料・厚生労働省)。

一度作った計画も、体調や住まい、支援者が変われば見直しが必要です。年に一度など、節目を決めて確認するとよいでしょう。

福祉避難所とはどのような場所なのでしょうか?

一般の避難所での生活が難しい方のために、配慮された設備や支援を備えた避難先です。

福祉避難所は、高齢の方や障害のある方など、特別な配慮が必要な方を受け入れるために自治体が指定する避難先です。バリアフリーの設備や、相談に応じる職員などが想定されています。国は「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」を示しており、受け入れの考え方が整理されています(福祉避難所の確保・運営ガイドライン・内閣府)。

ただし、どこが福祉避難所になるのか、どんな手順で利用できるのかは自治体によって異なります。災害が起きてから初めて調べると間に合わないこともあるため、ふだんから自治体の窓口やホームページで確認しておくことをおすすめします。最初に一般の避難所へ向かい、そこから福祉避難所へ移る流れになる地域もあります。利用のしかたを事前に確認しておくと、当日の不安を減らせるでしょう。

地域や支援者とのつながりはなぜ大切なのでしょうか?

災害時は一人で動くのが難しい場面が多く、顔の見える関係が支えになるからです。

避難の手伝いや情報の共有は、ふだんから関わりのある人ほど動きやすくなります。ご近所へのあいさつ、自治会や民生委員との関わり、地域の防災訓練への参加は、いざというときの安心につながります。「困ったときはこの人に声をかけよう」という相手が一人でもいると、心強さが違います。

ヘルプカードやコミュニケーション支援ボードを使うと、自分の状況や必要な支援を周囲に伝えやすくなります。声を出すのが難しい方や、初めて会う人に説明するのが負担な方にとって、こうした道具は助けになることがあります。準備や訓練を通じて、援助を求める練習をしておくのもよいでしょう。

支援する側にも無理のない範囲があります。誰が何をするかを話し合い、複数の人で支え合う形にしておくと、特定の人に負担が偏りにくくなります。地域包括支援センターや相談支援事業所は、こうした関係づくりの相談にも応じてくれます。

今日からできる最初の一歩は何でしょうか?

完璧を目指さず、ご本人の状況に合った備えを一つ始めることが、いちばん確実な一歩です。

私がおすすめするのは、まず「困りごとの書き出し」です。停電したら、放送が聞こえなかったら、移動が必要になったら何に困るかを紙に書いてみると、必要な備えが見えてきます。そこから、薬の予備、お薬手帳、ヘルプカード、連絡先メモなど、すぐに用意できるものから整えていきましょう。

次に、自治体や地域包括支援センター、相談支援事業所に、名簿や個別避難計画について問い合わせてみてください。医療機器を使っている場合は、停電時の対応を主治医や医療機器メーカー、電力会社にも相談しておきましょう。一度に全部やろうとせず、できることから少しずつで大丈夫です。

備えは、ご本人やご家族の安心のためのものです。急がず、無理なく、続けられる形で整えていきましょう。

よくある質問

Q. 障害があると必ず避難行動要支援者名簿に登録されるのでしょうか。
A. 自動的に登録されるとは限らず、仕組みや対象は自治体によって異なります。登録するかどうかはご本人やご家族が決められます。まずはお住まいの自治体や地域包括支援センターにご相談ください。

Q. 医療機器を使っています。停電が心配なのですが、どう備えればよいでしょうか。
A. 予備の電源や手動での対応方法は機器によって異なるため、自己判断は避けてください。主治医や医療機器メーカー、電力会社、自治体(保健福祉の窓口)にあらかじめ相談し、停電時の手順を決めておくことをおすすめします。

Q. 個別避難計画は誰が作ってくれるのでしょうか。
A. ご本人や家族を中心に、自治体や福祉の専門職、民生委員、ご近所などが関わって作っていきます。窓口は自治体や相談支援事業所、地域包括支援センターです。一人で抱え込まず、相談してみてください。

Q. 福祉避難所にはすぐに行けるのでしょうか。
A. 利用の手順は自治体によって異なり、最初に一般の避難所へ向かう地域もあります。災害前に、お住まいの自治体で利用方法を確認しておくと安心です。

Q. ヘルプカードはどこで手に入りますか。
A. 多くの自治体が配布しており、入手方法は地域によって異なります。自治体の福祉の窓口やホームページで確認できます。ご自身で必要な情報を書いて作ることもできます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。障害のある方の防災は、ご本人の状況に合わせて少しずつ整えていくものです。この記事が、その第一歩のお手伝いになればうれしく思います。あわせて、高齢の家族の防災や、持病・薬のある方の防災もご覧いただくと、ご家庭の備えがより具体的になります。

🛡 マモルの備えメモ
まずは「困りごとの書き出し」を1枚、今日つくってみてください。停電・情報・移動の3つで困ることを書き出すだけで、必要な備えが見えてきます。そのうえで、名簿や個別避難計画はお住まいの自治体や地域包括支援センターへ、医療機器や薬のことは主治医・メーカー・電力会社へ相談してみましょう。急がず、できることから一歩ずつ。

【免責】本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の医療・福祉・避難の判断を保証するものではありません。医療的ケア・お薬・医療機器の停電対策は主治医や医療機器メーカー、電力会社、自治体(保健福祉の窓口)に、名簿・個別避難計画・福祉避難所などの福祉や避難の制度は自治体や地域包括支援センター、相談支援事業所にご相談ください。制度の内容は自治体によって異なり、変更される場合があります。最新の情報はお住まいの自治体でご確認ください(最新確認日 2026-06-27)。命にかかわる緊急時は119番に通報してください。