高齢者の防災に必要なもの|常備薬・予備の眼鏡から早めの避難まで
高齢者の防災に必要なものを防災士マモルが解説。常備薬とお薬手帳、予備の眼鏡や補聴器、入れ歯や大人用紙おむつ、杖や連絡先カードまでチェック表付き。警戒レベル3での早めの避難、避難行動要支援者名簿、離れて暮らす親への備えもまとめます。
年をとった親のこと、あるいはご自身のこれからの備えのこと。高齢になると、防災で気をつける点が現役世代とは少し変わってきます。私は防災士で、二人の子どもの親です。同時に、離れて暮らす自分の親の備えにも頭を悩ませてきた一人です。
高齢者の防災でつまずきやすいのは、「水と食料があればいい」では足りないところです。毎日の薬、眼鏡や補聴器、入れ歯、移動を助ける杖。これらが一つ欠けるだけで、避難先での生活が一気に難しくなります。この記事では、高齢者の防災に必要なものを、私が親と一緒に整えてきた範囲で順番にまとめました。
最初に一つだけお伝えします。この記事では、薬の量や持病の管理といった医療の判断、福祉サービスの利用可否といった行政の判断には踏み込みません。それらは主治医・かかりつけ薬局、そしてお住まいの自治体や地域包括支援センターに相談してください。私がお渡しするのは、その相談や避難を「いざという時に動きやすくする」ための備えの部分です。
高齢者の防災が現役世代と違うのはなぜですか?
避難に時間がかかり、薬や眼鏡など欠かせない持ち物が多く、情報も届きにくいためです。だからこそ「早めに動く」「いつもの道具を切らさない」備えが要になります。
若い世代なら数分で逃げられる場面でも、足腰が弱っていたり、持病があったりすると、避難の準備と移動に何倍もの時間がかかります。さらに、毎日飲む薬や眼鏡、補聴器、入れ歯といった「これがないと生活が成り立たない」持ち物が増えます。
内閣府は、警戒レベル3を「高齢者等避難」と位置づけ、高齢の方や避難に時間のかかる方は、ほかの人より早く動き始めるよう呼びかけています。つまり高齢者の防災は、現役世代と同じタイミングで動いていては間に合わないことがある、という前提で考える必要があります(最新確認日 2026-06-27)。
この記事では、必要なものをそろえる話と、早めに動くための備えの話を両方扱います。どちらも欠かせないからです。
高齢者の防災に必要なものは何ですか?
水や食料といった基本に加えて、常備薬とお薬手帳、予備の眼鏡、補聴器と予備電池、入れ歯と洗浄具、大人用紙おむつ、杖などの歩行補助具、連絡先カードを備えます。「その人だけに必要なもの」を見落とさないことが要点です。
防災グッズの一覧はどこにでもありますが、高齢者の場合はそこに「個人ごとの欠かせない持ち物」が加わります。私が親の持ち出し袋を一緒に作ったとき、いちばん大事だと感じたのがこの部分でした。次のチェック表に、高齢者向けに加えたい持ち物をまとめます。
| 持ち物 | 用意の目安 | ひとことメモ |
|---|---|---|
| 常備薬(数日分) | 主治医・薬剤師に相談 | 量や内容の判断は自己流にしない |
| お薬手帳(紙+スマホ撮影) | 最新ページを控える | 避難先で薬を伝える要 |
| 予備の眼鏡 | 古い度数でも1本 | 壊れ・紛失に備える |
| 補聴器と予備電池 | 電池は多めに | 情報を聞き取るために必須 |
| 入れ歯と洗浄具 | ケース・洗浄剤も | 食事と体調に直結 |
| 大人用紙おむつ・尿取りパッド | 必要な方は多めに | 避難所で手に入りにくい |
| 杖・歩行器などの歩行補助具 | 普段使うものを | 予備のゴム先もあると安心 |
| 連絡先カード | 財布と袋の両方に | 病名・かかりつけ医・家族の連絡先 |
| 持病情報メモ | 1枚にまとめる | 本人が話せない時のため |
| 防寒具・使い慣れた日用品 | 軽くて温かいもの | 体温調整が難しくなるため |
このうち、常備薬の量や内容、持病の管理については、必ず主治医とかかりつけの薬局に相談してください。私が書けるのは「お薬手帳を控えておく」「数日分の予備を相談する」といった備えの段取りまでで、医療の判断はできません。詳しくは持病の薬に絞った別記事でも扱っています。
紙おむつや尿取りパッド、補聴器の電池、入れ歯の洗浄剤などは、避難所では数がそろわないことが多い物です。普段から少し多めに置いておき、使った分を補充する形にしておくと切らさずに済みます。
常備薬とお薬手帳はどう備えればよいですか?
数日分の予備を主治医・薬剤師に相談したうえで用意し、お薬手帳は紙とスマホ撮影で二重にしておきます。薬の量や種類の判断は自己流にしないことが大前提です。
毎日飲む薬がある高齢者にとって、薬が切れることは大きな不安です。ただ、予備を自分の判断で多めにため込むのはおすすめできません。薬の種類や保険のルールによって、できることが変わるからです。受診のときに「災害に備えて手元に予備を少し持っておきたい」と主治医に相談するところから始めてください。
お薬手帳は、避難先で医療者にいまの薬を正確に伝えるための記録になります。紙のお薬手帳に加えて、最新ページをスマホで撮影しクラウドに保存しておくと、手帳をなくしても情報が残ります。日本医師会も、災害に備えて持病の薬とお薬手帳を準備しておくよう患者向けに呼びかけています。
停電で困りやすいのが、冷蔵が必要な薬です。こうした薬を使っている方は、停電したときの扱いを必ず事前に主治医・薬剤師へ確認しておいてください。薬が切れて困ったときや体調が変わったときは、自己判断せず、医療機関・薬剤師・119番を頼ってください。
眼鏡・補聴器・入れ歯はなぜ防災で大事なのですか?
見る・聞く・食べるという毎日の暮らしに直結し、欠けると避難先で情報も体調も保ちにくくなるためです。それぞれ予備や付属品まで備えておくと、いざという時に困りにくくなります。
防災グッズというと水や食料を思い浮かべますが、高齢者にとっては眼鏡・補聴器・入れ歯も同じくらい欠かせません。私が親の備えで痛感したのは、これらが一つ欠けるだけで生活の質が大きく下がるという点でした。
予備の眼鏡は、いまの度数でなくても古いものを1本入れておくだけで、壊れたり流されたりしたときの助けになります。補聴器は、避難の呼びかけや放送を聞き取るために欠かせません。電池式の場合は予備電池を多めに用意し、充電式なら充電手段も考えておきます。
入れ歯は、食べることに直結します。避難所の食事をきちんととれるかどうかは体調を保つうえで重要で、洗浄具やケースもセットにしておくと衛生面でも安心です。これらは「あったほうがいい」ではなく「ないと困る」持ち物として、持ち出し袋の上のほうに入れておくことをおすすめします。
高齢者は避難のとき何に気をつければよいですか?
ほかの人より早く、警戒レベル3の段階で動き始めることが大切です。無理のない移動手段と付き添いを、平常時に決めておきます。
高齢者の避難で最も大事なのは「早めに動く」ことです。内閣府は、警戒レベル3を「高齢者等避難」とし、高齢の方や避難に時間のかかる方は、この段階で危険な場所から避難を始めるよう求めています。周りがまだ動いていなくても、自分は先に動く。これが間に合うかどうかを分けます。
ただ、早めに動くには準備が要ります。次のような点を平常時に決めておくと、いざという時に迷いません。
- 避難する場所と、そこまでの安全な道のりを実際に歩いて確かめておく
- 杖や歩行器など、移動に使う道具を玄関の近くに置いておく
- 誰が付き添うか、車で送るのか歩くのかを家族・近所で相談しておく
- 夜間や雨天など、動きにくい状況での避難の判断を話し合っておく
警戒レベルは必ず1から順に上がるとは限りません。状況によっては高いレベルがいきなり出ることもあります。だからこそ、ためらわず早めに動ける準備をしておくことが、高齢者の避難では何より効いてきます。体が不自由で自力での避難が難しい場合は、次に説明する避難行動要支援者名簿への登録も検討してください。
避難行動要支援者名簿とは何ですか?
災害時に自力での避難が難しい高齢者や障害のある方を、市町村があらかじめ把握し、地域での支援につなげるための名簿です。登録の仕組みは自治体で異なるため、最新の内容は自治体で確認してください。
平成25年の災害対策基本法の改正で、市町村は避難行動要支援者名簿を作ることが義務づけられました。さらに令和3年の改正では、一人ひとりの避難の手順を具体的に決める「個別避難計画」を作ることが市町村の努力義務となりました。これらは、いざという時に高齢者が地域の中で取り残されないための仕組みです。
名簿への登録や個別避難計画の作成を希望する場合は、お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談してください。登録の対象や手続き、計画の内容は自治体によって異なります。私が親の自治体に問い合わせたときも、地域によって運用にかなり差があると感じました。だからこそ、一般論で済ませず、自分の地域の最新の案内を確かめることが大切です(最新確認日 2026-06-27)。
あわせて、災害時に高齢者や配慮が必要な方を受け入れる「福祉避難所」がどこにあるかも、自治体で確認しておくと安心です。福祉避難所の指定や受け入れの仕組みも自治体ごとに違うため、最新の情報を自治体で確かめてください。
離れて暮らす親のためにできる備えは何ですか?
安否を確認する手段を決め、薬や持ち物の控えを共有し、地域とのつながりや名簿登録を一緒に整えておきます。離れているからこそ、平常時の段取りがものを言います。
私自身、親と離れて暮らしているので、この不安はよく分かります。災害が起きてから連絡を取ろうとしても、電話はつながりにくくなります。だから、平常時のうちに次のことを決めておくことをおすすめします。
- 災害時の連絡手段を複数決める(電話だけでなく、災害用伝言ダイヤル171やメッセージアプリも)
- 親が飲んでいる薬・かかりつけ医・持ち物の保管場所を、離れていても把握しておく
- 近所の方や民生委員など、地域で声をかけてくれる人とのつながりを確かめておく
- 避難行動要支援者名簿への登録や福祉避難所について、親と一緒に自治体へ相談しておく
特に、地域とのつながりは離れて暮らす家族にとって心強い支えになります。いざという時に最初に動けるのは、遠くの家族ではなく近くの人だからです。親が普段から近所づきあいを保てているか、見守りの仕組みを使えているかを、帰省のタイミングなどで確かめておくとよいと思います。福祉サービスやサポートの利用については、地域包括支援センターが相談先になります。
離れて暮らす親への備えは、それだけで一つの大きなテーマです。連絡手段や安否確認のくわしい段取りは、別記事でもまとめています。
自宅の中で高齢者が気をつける安全対策は?
家具の固定と、つまずきやすい段差の解消が中心です。地震や避難時のけがを防ぎ、いざという時に動ける状態を保ちます。
避難の備えと同じくらい大事なのが、家の中の安全です。高齢者は転倒すると大きなけがにつながりやすく、それが避難の妨げにもなります。次の点を確認しておきましょう。
- 寝室や生活の中心になる部屋の家具を固定し、倒れてこないようにする
- 寝ている場所の近くに、倒れて出口をふさぐような背の高い家具を置かない
- ガラスの飛散防止フィルムを貼り、はだしでも歩けるようスリッパを枕元に置く
- 廊下や玄関の段差につまずき防止の工夫をし、手すりの設置も検討する
- 避難経路になる場所に物を置かず、夜間でも通れるようにしておく
消防庁も、家具の固定が地震のけがを防ぐうえで有効だと家庭向けに案内しています。家具の固定は一度やれば長く効く備えです。高齢のご家族と一緒に、寝室から手をつけてみてください。手すりの設置や住宅改修で福祉の補助が使えるかどうかは、自治体や地域包括支援センターに相談すると分かります。
よくある質問
高齢者の防災について、相談でよくいただく質問を防災士の視点でまとめました。医療や福祉の判断にあたる部分は、専門の窓口への相談をおすすめしています。
Q. 高齢者の防災に必要なものは、市販の防災セットだけでそろいますか
A. 基本の水や食料は市販の防災セットでそろいますが、それだけでは足りません。常備薬やお薬手帳、予備の眼鏡、補聴器の電池、入れ歯の洗浄具、大人用紙おむつ、使い慣れた杖など、その人だけに必要なものを足してください。これらは避難所で手に入りにくいことが多いので、平常時から少し多めに備えておくと切らさずに済みます。
Q. 高齢の親は、いつ避難を始めればよいですか
A. 警戒レベル3「高齢者等避難」が出たら、避難に時間のかかる方は動き始める目安です。ほかの人より早めに行動することが大切で、ためらわないことが要点になります。警戒レベルは必ず順番どおりに上がるとは限らないため、危険を感じたら自主的に避難する判断も持っておいてください。
Q. 避難行動要支援者名簿には、どうすれば登録できますか
A. 登録の対象や手続きは自治体によって異なります。お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談してください。あわせて、一人ひとりの避難手順を決める個別避難計画や、福祉避難所についても確認しておくと安心です。最新の内容は必ず自治体で確かめてください。
Q. 離れて暮らす親の安否は、災害時にどう確認すればよいですか
A. 電話はつながりにくくなるため、災害用伝言ダイヤル171やメッセージアプリなど、複数の手段を平常時に決めておいてください。近所の方や民生委員など、地域で声をかけてくれる人とのつながりも確かめておくと、最初の安否確認が早くなります。
Q. 介護や福祉のサービスについては、どこに相談すればよいですか
A. 介護や見守り、住宅改修の補助といった福祉サービスは、お住まいの自治体や地域包括支援センターが相談窓口です。利用できる制度は地域や状況によって異なるため、最新の内容をそれぞれの窓口で確認してください。体調や緊急の困りごとは、医療機関や119番を頼ってください。
まとめ:今日できる一歩から
高齢者の防災は、いきなり完璧を目指さなくて大丈夫です。まずはお薬手帳をスマホで1枚撮ること、予備の眼鏡を1本袋に入れること、寝室の家具を固定すること。この小さな三つから始めれば、いざという時にぐっと動きやすくなります。
そして、避難は早めに。警戒レベル3で動き始める心づもりを、家族で共有しておいてください。避難行動要支援者名簿や福祉避難所、福祉サービスについては、自治体や地域包括支援センターという心強い相談先があります。今日の一歩が、ご家族の安心につながります。
🛡 マモルの備えメモ
今日はまず、高齢のご家族と一緒に「眼鏡の予備」と「お薬手帳の写真」を用意するところから始めてみませんか。次に帰省したときや電話したときに、避難する場所と、誰が付き添うかを一つ決めておきましょう。あなたとご家族のペースで、一つずつで大丈夫です。
免責事項
本記事は高齢者の防災の備えに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬に関する医療上の助言や、個別の福祉サービスの利用可否を判断するものではありません。常備薬の量・内容や持病の管理は、必ず主治医およびかかりつけの薬局にご相談ください。介護・見守り・住宅改修の補助などの福祉サービスや、避難行動要支援者名簿・個別避難計画・福祉避難所については、お住まいの自治体や地域包括支援センターにご相談ください。これらの制度の対象や運用は自治体によって異なります。体調の悪化や緊急の困りごとがあるときは、119番・医療機関にご相談ください。最新の情報は自治体で確認してください(最新確認日 2026-06-27)。
参考にした主な一次情報・公的情報
- 内閣府防災「避難情報に関するガイドライン(警戒レベル3 高齢者等避難)」
- 内閣府防災「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針・個別避難計画」
- 消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策に関する情報」
- 厚生労働省「地域包括支援センター・高齢者の災害時支援に関する情報」
- 日本医師会「災害時のために、持病の薬を備えていますか?」