🛡防災の備えメモ

持病の薬と災害の備え|お薬手帳のバックアップと予備薬の準備

持病や常備薬がある人の災害への備えを防災士マモルが解説。お薬手帳の紙+アプリ二重化、処方内容の控え、主治医・薬剤師に相談した予備薬、停電時の冷蔵保存薬の注意までチェックリスト付きでまとめます。

地震や水害でいつもの薬が手に入らなくなる。持病のある方やご家族にとって、これはとても切実な不安だと思います。私は防災士で、二人の子どもの親です。家族の中に常備薬を毎日飲んでいる人がいると、防災対策の優先順位がガラッと変わることを実感しています。

この記事では、薬を飲んでいる方が災害に備えるときの考え方と、今日からできる準備を順番にまとめました。お薬手帳のバックアップ、予備薬の用意の仕方、停電したときの冷蔵保存薬の注意点まで、私が家族と一緒に整えてきた範囲でお伝えします。

最初に一つだけ、はっきりお伝えしておきます。この記事では、薬の量を増やす・減らす・やめる・別の薬で代わりにする、といった医療の判断は一切扱いません。それらは必ず主治医とかかりつけの薬剤師に相談してください。私がお渡しするのは、相談や受診を「いざという時に動きやすくする」ための備えの部分だけです。

災害時に持病の薬が手に入らなくなるのはなぜですか?

流通の停止や薬局の被災、停電、道路の寸断など複数の原因が重なるためです。普段は当たり前に受け取れる薬でも、災害時は数日単位で入手が難しくなることがあります。

大きな地震や水害が起きると、薬局そのものが営業できなくなったり、医薬品を運ぶ流通が止まったりします。停電すれば冷蔵が必要な薬の保管も難しくなります。さらに、避難でいつもの病院や薬局から離れた場所に移ることもあります。

こうした事態に備えて、厚生労働省は災害時に処方箋を持たずに薬局を訪れた被災者へ、後日処方箋を発行することを条件に薬を渡せるよう通知を出しています。2011年の東日本大震災や2024年の能登半島地震では、お薬手帳などで服用中の薬を確認できた人に、処方箋なしでも薬を渡す対応が取られました。ただし、こうした特例の運用は災害の規模や地域、時期によって異なります。実際の対応は、そのときの自治体・薬剤師会・医療機関の案内に従ってください(最新確認日 2026-06-27)。

ここで覚えておきたいのは、「自分が何の薬を飲んでいるか」を医療者に正確に伝えられるかどうかが、薬を早く受け取れるかを大きく左右するという点です。だからこそ、次に説明するお薬手帳の備えが効いてきます。

お薬手帳は災害のときにどう役立ちますか?

服用中の薬の名前・量・飲み方を医療者へ正確に伝える記録になり、避難先での治療や調剤をスムーズにします。記憶に頼らず提示できることが大きな価値です。

避難所や慣れない医療機関では、初めて会う医師や薬剤師にあなたの薬の状況を説明することになります。薬の名前を正確に覚えている人は意外と少なく、「白くて丸い薬」だけでは医療者も判断に困ります。お薬手帳があれば、処方の履歴をそのまま見せられます。

日本医師会も、災害時のためにお薬手帳を活用し、持病の薬を備えておくことを患者向けに呼びかけています。お薬手帳は、もらった薬の情報を1冊にまとめる役割を持っています。災害時はそれが医療者との会話を一気に早めてくれます。

ただし、紙のお薬手帳には弱点もあります。津波や浸水で流される、火災で焼ける、避難の混乱で持ち出せない、という事態は十分に起こり得ます。だから「お薬手帳を1冊持っている」だけで満足せず、次の章で説明するバックアップまで整えておくことをおすすめします。

お薬手帳はどうやってバックアップすればよいですか?

紙のお薬手帳に加えて、スマホの写真・電子お薬手帳アプリ・コピーの3通りで多重化します。1か所が失われても情報が残る状態にしておきます。

私が家族にすすめているのは、次の三段構えです。手間はかかりますが、一度作れば更新は数か月に1回で済みます。

スマホで写真を撮っておく

お薬手帳の見開きを、最新の処方ページを中心にスマホで撮影しておきます。クラウドにも同期しておけば、スマホ本体が壊れても別の端末から見られます。これは今日5分でできる、いちばん手軽なバックアップです。

電子お薬手帳アプリを使う

電子お薬手帳アプリを使うと、処方の履歴をスマホで管理できます。製品によっては、通信が使えない状況でも一定期間分の薬剤情報をオフラインで確認できる機能を備えたものもあります。停電や通信障害が起きやすい災害時には、こうしたオフライン対応の有無を事前に確かめておくと役立ちます。どのアプリが自分に合うかは、かかりつけの薬剤師に相談すると選びやすくなります。

紙のコピーを持ち出し袋に入れる

スマホが充電切れになる事態も想定して、紙の控えも用意します。お薬手帳の最新ページのコピー、または処方内容を書き写したメモを、防水のポーチに入れて非常持ち出し袋へ。アレルギーや過去の副作用の記録があれば、それも一緒にしておくと医療者に伝わりやすくなります。

電子だけ・紙だけ、どちらかに偏らせないことがコツです。災害は停電も浸水も同時に起こり得るので、性質の違う方法を組み合わせておくと安心して動けます。

予備の薬はどのくらい、どうやって用意すればよいですか?

数日分を目安に、必ず主治医・かかりつけ薬剤師に相談したうえで用意します。自己判断で多めにもらおうとしたり、量を調整したりはしないでください。

非常用の備蓄として、日本医師会などは持病の薬を3日分、できれば7日分ほど確保しておくことを患者向けに勧めています。ただし、これは「自分の判断で薬をため込む」という意味ではありません。

予備薬の用意は、診察のときに「災害に備えて手元に少し予備を持っておきたい」と主治医に相談するところから始めます。薬の種類や保険のルールによって、できること・できないことが変わります。だからこそ、主治医とかかりつけの薬剤師に相談して、あなたに合った無理のない方法を決めてもらうことが大切です。

私自身、家族の薬について薬剤師さんに相談したとき、「次の受診のタイミングで先生に伝えておくといいですよ」と具体的に案内してもらえました。専門家に聞くと、自分では思いつかない選択肢が見つかります。

予備薬を用意できたら、防災として次の点に気をつけてください。

  • 使用期限を定期的に確認し、古いものから日常で使って入れ替える(主治医・薬剤師の指示の範囲で)
  • 直射日光や高温多湿を避けた場所で保管する
  • 飲み方のメモを一緒にしておき、家族の誰が見ても分かるようにする

薬を「ただ置いておく」のではなく、生活の中で回しながら備えておくと、いざという時にも切らさずに済みます。

持病がある人は何をチェックしておけばよいですか?

ここまでの内容を、今日から確認できるチェックリストにまとめました。一度に全部やろうとせず、上から一つずつで構いません。

チェック項目 状態 ひとことメモ
お薬手帳を最新の状態にしている 受診のたびに貼る・記録する
お薬手帳をスマホで撮影しクラウド保存した 今日5分でできる
電子お薬手帳アプリを設定した オフライン確認の可否を薬剤師に確認
処方内容のコピー・メモを持ち出し袋に入れた 防水ポーチに
アレルギー・過去の副作用の記録を控えた 医療者に伝える前提
予備薬の用意を主治医・薬剤師に相談した 自己判断で増やさない
予備薬の使用期限を確認し入れ替える仕組みを決めた 古いものから使う
冷蔵保存薬がある場合、停電時の扱いを医療者に確認した 次章で詳しく
病名・かかりつけ医・連絡先を書いたカードを携帯している 財布や持ち出し袋に
家族が薬の場所と内容を把握している 本人が動けない時のため

全部に印が付くと、避難のときに「何を持って、どこに頼ればいいか」で迷う時間が減ります。いざという時に行動しやすくなります。

冷蔵が必要な薬は停電のときどう扱えばよいですか?

インスリンなど冷蔵保存の薬は温度管理が重要なため、扱い方は必ず主治医・薬剤師に事前に確認しておきます。自己判断で使用の可否を決めないでください。

冷蔵庫で保管する薬は、停電すると保管環境が変わってしまいます。こうした薬を使っている方は、災害が起きてから慌てないために、平常時のうちに主治医や薬剤師へ「停電したときはどうすればよいか」を具体的に聞いておくことを強くおすすめします。

たとえば、糖尿病の患者団体である日本糖尿病協会は、災害時に備えて薬や療養に必要なものを準備しておくよう、患者向けに情報を発信しています。インスリンを使っている方向けの備えの考え方も案内されているので、自分の状況に合うかどうかを含めて、かかりつけの医療者と一緒に確認しておくと安心です。

停電が長引いて薬の保管に不安が出たときや、体調に変化を感じたときは、自己判断で対処しようとせず、医療機関や薬剤師、災害時の医療救護所に相談してください。お薬手帳を提示すれば、状況を早く正確に伝えられます。

避難先で医療者に伝える準備は何をしておけばよいですか?

病名・服用中の薬・アレルギー・かかりつけ医を、すぐ見せられる形にまとめておきます。本人が話せない状況でも伝わるようにしておくことが要点です。

避難先では、初めて会う医療者にあなたの情報を短時間で伝える必要があります。次のものを一つにまとめておくと、会話がぐっと早くなります。

  • お薬手帳(または写真・コピー)
  • 病名と、かかりつけ医・医療機関の名前と連絡先
  • アレルギーや過去に出た副作用
  • 服用中の薬の名前と飲み方
  • 緊急連絡先(家族など)

これらを1枚のカードや1冊にまとめ、財布や持ち出し袋に常に入れておきます。意識がはっきりしない、うまく話せない、という状況でも、医療者がカードを見れば対応を始められます。

体調が急に悪くなったとき、薬が切れて困ったときは、無理をせず119番や近くの医療機関、災害時に開設される医療救護所を頼ってください。記事の情報だけで自分の体の判断をしないことが、いちばん大事な備えです。

家族として何を分担しておけばよいですか?

本人が動けない事態に備え、家族が薬の内容・保管場所・かかりつけ医を把握しておきます。情報を一人に集中させないことが安全につながります。

持病のある本人だけが薬の情報を握っていると、その人が体調を崩したり、はぐれたりしたときに家族が動けなくなります。私の家でも、誰がどの薬を飲んでいて、どこに予備があり、どの病院にかかっているかを家族で共有するようにしています。

具体的には、次のような分担が役立ちます。

  • 薬とお薬手帳の控えの保管場所を、家族全員が知っている
  • 持ち出し袋を持って逃げる担当をあらかじめ決めておく
  • かかりつけ医や薬局の連絡先を、家族のスマホにも登録しておく
  • 高齢の家族がいる場合は、声かけと移動の手伝いを誰がするか決めておく

高齢のご家族がいる場合の備えは、こまかな配慮が増えます。関連する内容は別記事でも扱っているので、あわせて確認してみてください。

よくある質問

防災相談でよくいただく質問を、防災士の視点でまとめました。医療の判断にあたる部分は、すべて主治医・薬剤師への相談をおすすめしています。

Q. 予備の薬は、自分の判断で多めにもらっておいてよいですか
A. いいえ、自己判断で増やすことはおすすめできません。薬の種類や保険のルールによって対応が異なるため、まず主治医とかかりつけの薬剤師に相談してください。「災害に備えて手元に予備を持ちたい」と受診のときに伝えるところから始めると進めやすくなります。

Q. 災害で薬が切れてしまったら、市販薬で代わりにしてもよいですか
A. 市販薬で代用してよいかどうかは、薬剤師や医師でなければ判断できません。自己判断はせず、避難先の薬局・医療機関・医療救護所に相談してください。お薬手帳を見せれば、何を飲んでいたかを早く正確に伝えられます。

Q. 処方箋がなくても薬をもらえる特例があると聞きました。あてにしてよいですか
A. 過去の大きな災害では、お薬手帳などで服用中の薬を確認できた人に、処方箋なしで薬を渡す対応が取られたことがあります。ただし運用は災害の規模・地域・時期によって異なります。あてにし切るのではなく、お薬手帳の備えと数日分の予備を整えたうえで、実際の対応は自治体・薬剤師会・医療機関の案内に従ってください。

Q. お薬手帳はアプリだけにしてしまってよいですか
A. アプリは便利ですが、停電や端末の故障で見られなくなる可能性があります。紙の控えやコピーも残し、性質の違う方法を組み合わせておくことをおすすめします。

Q. 停電でインスリンなどの冷蔵保存薬が心配です。どうすればよいですか
A. 冷蔵が必要な薬の扱いは、必ず事前に主治医・薬剤師へ確認しておいてください。停電が長引いて不安なときや体調に変化があるときは、自己判断せず医療機関や薬剤師、医療救護所に相談してください。

まとめ:今日できる一歩から

持病の薬の備えは、いきなり完璧を目指さなくて大丈夫です。まずはお薬手帳をスマホで撮ること、次の受診で予備薬について相談すること。この二つから始めれば、いざという時に動きやすくなります。

薬の量や種類の判断は、いつでも主治医とかかりつけの薬剤師が専門家として支えてくれます。私たちが平常時にできるのは、その相談につながりやすい状態を整えておくこと。今日の小さな一歩が、家族の安心につながります。

🛡 マモルの備えメモ

今日はまず、お薬手帳の最新ページをスマホで1枚撮るところから始めてみませんか。撮ったら、次の受診のときに「災害の備えとして予備薬を相談したい」とメモしておきましょう。あなたとご家族のペースで、一つずつで大丈夫です。


免責事項

本記事は防災の備えに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬に関する医療上の助言を行うものではありません。薬の量・種類・服用方法・中止や代替の判断は、必ず主治医およびかかりつけの薬剤師にご相談ください。体調の悪化や薬が手に入らず困ったときは、119番・医療機関・災害時の医療救護所にご相談ください。災害時の制度や特例の運用は状況により異なります。実際の対応は、自治体・薬剤師会・医療機関の案内に従ってください(最新確認日 2026-06-27)。

参考にした主な一次情報・公的情報

  • 厚生労働省「災害時の医薬品等の供給・処方箋なし調剤に関する通知・情報」
  • 日本薬剤師会「薬剤師のための災害対策マニュアル」
  • 日本医師会「災害時のために、持病の薬を備えていますか?」
  • 日本糖尿病協会(患者向け災害時の備えに関する情報)
  • 内閣府防災「非常用持ち出し品・備蓄に関する情報」