マンションの在宅避難の過ごし方は?防災士が水・トイレ・安否確認まで解説
マンションでの在宅避難の過ごし方を防災士マモルが解説。建物の安全確認が前提であること、エレベーター停止で水や物資を階段で運ぶ大変さと各戸での備蓄、断水時の排水(排水管の安全確認・管理組合)、高層階の揺れや停電、玄関での安否確認、管理組合や近所との助け合い、共用部の確認まで、チェック表とよくある質問で整理します。
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「マンションだから、災害が起きても家にいればなんとかなる」。そう考えて、在宅避難の具体的な過ごし方まではイメージできていない方は多いと思います。私自身、マンションに住みはじめたころは、いざ電気も水も止まったら家の中でどう何日も過ごすのか、正直まったく想像がついていませんでした。
私は防災士で、二人の子どもを育てる親でもあります。マンションは構造が頑丈で在宅避難に向いている一方、エレベーターが止まると物資の運び込みが一気に難しくなり、断水時のトイレや高層階の停電など、戸建てとは別の悩みが出てきます。
先に結論をお伝えします。マンションの在宅避難で大切なのは、まず建物の安全が確認できること、エレベーター停止を前提に各戸で水・食料・トイレ・明かり・情報を備えておくこと、そして排水管の安全が確認できるまでトイレを安易に流さないことです。建物に大きな損傷の恐れがあれば、在宅避難にこだわらず避難所など安全な場所へ向かってください。
この記事では、マンションでの在宅避難の過ごし方を、準備と当日の行動に分けて整理します。読み終えるころには、「うちのマンションで、いざというときどう過ごすか」が自分の言葉で言えるようになっているはずです。
本記事の最新確認日: 2026-06-27。記載は内閣府防災、東京都「マンション防災」、消防庁などの公式情報にもとづいています。物資の配布や管理体制は建物や自治体によって大きく異なるため、お住まいのマンションの防災マニュアル・管理組合の案内・自治体のハザードマップで最新の情報をご確認ください。
マンションの在宅避難とは何なの?どんな過ごし方になるの?
被災後に避難所へ移らず、安全が確認できた自宅にとどまって生活を続ける避難の形です。電気・水道・ガスが止まった前提で、手元の備えで数日から1週間を過ごすことになります。
東京都の「マンション防災」では、マンションは木造住宅などと比べて建物が頑丈で、在宅避難を送りやすいとされています。一方で、大きな被害があると電気・水道・都市ガスの復旧に時間がかかり、エレベーターも止まります。そのため、避難所へ移動するよりも、住み慣れた自宅にとどまって生活を立て直すことが現実的な選択肢になりやすいのです。
在宅避難の過ごし方は、ふだんの暮らしとはかなり違います。蛇口をひねっても水は出ず、スイッチを押しても照明はつかず、トイレも自由には流せないかもしれません。だからこそ、何が止まっても当面は暮らせるよう、各戸で備えをそろえておくことが過ごし方の出発点になります。
ただし、これはあくまで建物の安全が確認できる場合に限った話です。次の章で、その大前提から確認していきます。
在宅避難していいかは、どう判断すればいいの?
建物に大きな損傷の恐れがないか確認できることが前提です。傾きや大きなひび割れ、扉が開かないなどの異変があるときは、無理にとどまらず避難所や安全な場所へ向かってください。
マンションは構造が頑丈なため、建物に大きな損傷がなければ在宅避難がしやすいとされています。とはいえ、見た目で安全かどうかを完全に見極めるのは難しいものです。次のような異変があるときは、在宅避難にこだわらないでください。
- 壁や柱に大きなひび割れがある
- 建物が傾いているように感じる
- 玄関の扉や窓が変形して開きにくい
- 共用廊下や階段に大きな損傷がある
自治体や専門家による応急危険度判定が行われることもあります。危険と判定された建物には立ち入らず、案内に従って避難してください。判断に迷うときは、安全側に立って避難を選ぶほうが安心です。私はいつも「とどまるかどうかは、建物の安全がはっきりしてから決める」とお伝えしています。
エレベーターが止まったら、物資の運搬はどうなるの?
地震を感知するとエレベーターは安全のため止まります。水や食料、簡易トイレを階段で運ぶことになり、高層階ほど負担が大きくなります。だからこそ、買い出しに頼らない各戸の備蓄が頼りになります。
多くのエレベーターは地震を感知すると最寄り階に止まり、点検が済むまで動きません。停電が重なれば、復旧にさらに時間がかかることもあります。そうなると、水のペットボトルや食料、使用済みの簡易トイレのごみを、すべて階段で上り下りして運ぶことになります。1人1日3リットルの水を家族分運ぶだけでも、高層階では相当な重労働です。
この負担を減らす一番の方法は、災害が起きる前から各戸に十分な備蓄をしておくことです。エレベーターが止まってから慌てて買い出しに行く前提ではなく、「しばらく階段生活になる」と想定して、手元で完結できる量をそろえておきましょう。エレベーター停止時に高層階や要配慮者をどう支えるかは、管理組合の取り決めも確認しておくと安心です。
在宅避難の備蓄は、何をどれくらい用意すればいいの?
水・食料・簡易トイレを「最低でも1週間分」を目安に、各戸で備えることがすすめられています。明かりと情報収集の手段も忘れずに用意してください。
内閣府の被害想定をふまえた東京都の考え方では、大きな地震のあとは電気・水道・都市ガスの復旧に日数を要するとされ、在宅避難のためには少なくとも1週間分の備えが望ましいとされています。マンションはエレベーターが止まると買い出しそのものが負担になるため、手元の備蓄が暮らしを左右します。
日常使いの食品を多めに買い、使った分を補充していく「日常備蓄(ローリングストック)」なら、特別な準備をしなくても無理なく続けられます。私が用意しているのは、おおむね次のような中身です。
マンション在宅避難の備蓄チェック表
| 区分 | 用意するもの | 量の目安 |
|---|---|---|
| 水 | 飲料水・調理用の水 | 1人1日3リットル × 1週間分 |
| 食料 | 主食・レトルト・缶詰など火を使わず食べられるもの | 1週間分 |
| トイレ | 簡易トイレ(携帯トイレ) | 1人1日5回程度 × 1週間分 |
| 明かり | 懐中電灯・ランタン・予備電池 | 各部屋に1つを目安 |
| 情報 | 乾電池式ラジオ・モバイルバッテリー・充電手段 | 数日使える容量 |
| 衛生・健康 | ウェットティッシュ・救急用品・常備薬 | 1週間分 |
これらの量はあくまで目安です。家族の人数や健康状態、乳幼児・高齢者の有無によって必要な物は変わります。お住まいの自治体が示す備蓄リストもあわせて確認し、わが家に合う中身に整えてください。簡易トイレや備蓄品は防災用品として市販されていますが、製品ごとに仕様や対応範囲が異なります。誇大な表示にまどわされず、住戸や家族構成に合うものを選んでください。
断水したら、マンションのトイレは流してもいいの?
排水管が損傷している恐れがあるため、安易に流さず、まずは簡易トイレを使ってください。流していいかどうかは、排水管の安全が確認できるまで管理組合や管理会社に確認します。
マンションでは、地震で排水管が壊れていると、上の階で流した水が下の階の住戸であふれる事故につながる恐れがあります。配管の損傷は見た目ではわかりにくいため、断水時や地震の直後は、便器の水で流すことを控えるのが安全側の判断です。
私がお伝えしている手順は次のとおりです。
- 断水・地震直後は、便器に水を流さず簡易トイレ(携帯トイレ)で対応する
- 排水管が無事かどうかを自分だけで判断せず、管理組合や管理会社に確認する
- 建物の点検が済み、流してよいと案内があるまでは簡易トイレを使い続ける
トイレの備えは見落とされがちですが、水や食料と同じくらい大切です。流せない状況が続いても困らないよう、簡易トイレは多めに用意しておきましょう。マンションの災害時トイレは奥が深いので、別の記事でさらにくわしく整理しています。
高層階の揺れや停電は、過ごし方にどう影響するの?
高層階は長周期地震動でゆっくり大きく揺れやすく、停電すると断水も重なりやすくなります。家具の固定と、明かり・情報・暑さ寒さへの備えが過ごし方を左右します。
高い建物ほど周期の長い「長周期地震動」の影響を受けやすく、上の階ほどゆっくり大きく長く揺れる傾向があるとされています。揺れがゆっくりでも幅が大きいと家具が大きく動くため、在宅避難を続けるうえでも、ふだんからの家具の固定が欠かせません。
停電も過ごし方に大きく関わります。マンションは水を屋上のタンクや給水ポンプで各戸へ送っている建物も多く、停電するとポンプが止まって断水することがあります。電気が止まると、照明・冷暖房・調理・スマホの充電もできなくなります。私が在宅避難の過ごし方で意識しているのは次の点です。
- 各部屋に明かりを用意し、夜間も移動できるようにする
- 乾電池式ラジオやモバイルバッテリーで、情報と連絡の手段を確保する
- 夏は熱中症、冬は低体温に注意し、衣類や寝具で体温を保つ
- 体調がすぐれないときは、ためらわず医療機関や119番に相談する
停電と断水が同時に起きる前提で備えておくと、いざというときの過ごし方が落ち着きます。
安否や無事は、どうやって周りに知らせればいいの?
玄関の扉に無事を知らせる工夫をしておくと、住戸を一軒ずつ訪ねる手間を減らせます。多くのマンションで、安否確認の方法を取り決めています。
マンションは戸数が多いため、災害時に全戸の安否を一軒ずつ確認するのは大きな負担です。そこで、無事な住戸が玄関の扉などにわかるしるしを掲げ、確認する側がしるしのない住戸だけを重点的に見て回る方法が広まっています。マグネットや張り紙で「無事です」と示す仕組みを取り入れているマンションもあります。
私が確認しておくとよいと考えているのは、次のような点です。
- お住まいのマンションに安否確認の取り決めがあるか
- 無事を知らせるマグネットや表示が配られているか
- 取り決めがない場合、玄関にどう無事を示すか家族で決めておく
安否確認の方法はマンションによって異なります。まずは管理組合や防災マニュアルで仕組みを確かめ、家族とも共有しておきましょう。同じ階や近隣の住戸と日ごろから顔の見える関係をつくっておくと、いざというときに声をかけ合いやすくなります。
管理組合や近所との助け合いは、どう備えればいいの?
防災マニュアルや備蓄倉庫の有無、共用部の状況確認の流れを確かめ、日ごろから近隣と関わっておくことが助け合いの支えになります。共助の単位は管理組合・自治会です。
マンションの在宅避難では、個人の備えに加えて建物全体の備えがものを言います。多くの管理組合では、防災マニュアルの整備、共用部での備蓄、安否確認の方法、要配慮者への対応などを取り決めています。災害時には、エントランスや地下の駐車場、電気室、貯水槽などの共用部に被害が出ていないかの確認も必要になります。
私が確認しておくとよいと考えているのは、次のような点です。
- マンション独自の防災マニュアル・防災計画があるか
- 共用部に備蓄倉庫や防災資機材があるか
- 共用部(電気室・受水槽・エレベーター・駐車場)の被害をだれが確認するか
- 高齢者や障がいのある方など、支援が必要な住戸への配慮があるか
取り決めがまだない場合は、防災訓練や総会の場で話題にしてみるのも一歩です。在宅避難は自宅で完結する印象がありますが、断水時のトイレや共用部の確認など、住人どうしの協力が欠かせない場面は少なくありません。在宅避難全般の過ごし方は、マンションに限らない基本もあわせて押さえておくと安心です。
マンションの在宅避難でよくある質問は?
最後に、相談でよく聞かれる質問にお答えします。
Q. マンションなら、地震のあとは必ず家にいて大丈夫ですか。
A. 必ず大丈夫とはいえません。在宅避難ができるのは、建物の安全が確認できる場合に限られます。傾きや大きなひび割れ、扉が開かないなどの異変があるときは、無理にとどまらず避難所や安全な場所へ向かってください。
Q. 在宅避難の備蓄は、どれくらい用意すればいいですか。
A. 水・食料・簡易トイレを、最低でも1週間分が目安とされています。エレベーター停止で買い出しが難しくなる前提で、各戸ごとに用意してください。必要な量は家族構成や健康状態で変わるため、自治体の備蓄リストもご確認ください。
Q. 断水したとき、トイレの水は流してもいいですか。
A. 排水管が損傷している恐れがあるため、安易には流さないでください。まずは簡易トイレを使い、流してよいかは排水管の安全が確認できるまで管理組合や管理会社の案内に従ってください。
Q. 高層階だと、在宅避難はかえって大変ではないですか。
A. エレベーターが止まると物資の運搬が負担になるのは事実です。だからこそ、買い出しに頼らず各戸で1週間分を備えておくことが助けになります。停電や長周期地震動への備えとあわせて準備しておくと、過ごし方が落ち着きます。
Q. 隣近所に無事を知らせるには、どうすればいいですか。
A. 玄関の扉に無事を知らせるマグネットや張り紙を掲げる方法が広く使われています。お住まいのマンションに安否確認の取り決めがあるかを確認し、なければ家族でしるしの出し方を決めておきましょう。
まとめ:マンションの在宅避難は「安全確認・各戸の備え・流さない判断」
マンションの在宅避難で大切なのは、まず建物の安全が確認できること、エレベーター停止を前提にした各戸での1週間分の備蓄、そして排水管の安全が確認できるまでトイレを安易に流さないことです。高層階の揺れや停電にも備え、玄関での安否確認や管理組合との助け合いの仕組みも確かめておきましょう。
完璧な備えを一度にそろえる必要はありません。今日は水を1ケース、明日は簡易トイレを1パック。私もそうやって少しずつ整えてきました。建物に大きな損傷の恐れがあるときは在宅避難にこだわらず、避難所や安全な場所へ向かう判断も忘れないでください。できることから一歩ずつ進めていきましょう。
簡易トイレや備蓄品、明かりや充電手段は、防災用品として市販されています。製品ごとに仕様や対応範囲が異なるため、わが家の住戸や家族構成に合うものを選んでください。本記事で紹介する考え方が、あなたの備えの後押しになればうれしいです。
免責事項: 本記事は一般的な防災情報の提供を目的としており、特定の状況での安全を保証するものではありません。在宅避難ができるかどうかは建物の安全確認が前提です。物資の配布や管理体制は建物・自治体によって異なります。最終的な判断は、お住まいのマンションの防災マニュアル・管理組合・自治体の案内にもとづいて行ってください。けがや体調の悪化があった場合は医療機関や119番に相談してください。
🛡 マモルの備えメモ
マンションの在宅避難は「建物の安全が確認できること」がすべての前提です。そのうえで、エレベーターが止まっても困らない各戸の備えと、断水時に安易に流さない判断を用意しておきましょう。まずはわが家の備蓄を見直して、水と簡易トイレを1週間分そろえるところから始めてみませんか。お住まいのマンションの防災マニュアルや自治体のハザードマップもあわせて確認しておくと、いざというときの行動が変わります。
参考にした主な公式情報:
- 内閣府防災「防災情報のページ」 https://www.bousai.go.jp/
- 東京都防災ホームページ「マンション防災」 https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/
- 消防庁 https://www.fdma.go.jp/