🛡防災の備えメモ

車の水没対策と避難|冠水路に入らない・脱出と備えの基本

車の水没が心配な方へ。防災士が、冠水した道路やアンダーパスに進入しない判断、水没時の脱出手順、再始動を避ける理由、事前の備えまでをやわらかく解説します。

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大雨や台風のたびに、「車が水没したらどうしよう」と不安になる方は多いと思います。私自身も二児の親として、家族を乗せて運転している最中に冠水に出くわす場面を何度も想像してきました。車は大切な財産ですが、水害のときにいちばん優先すべきは、車ではなく自分と同乗者の命です。

この記事では、防災士の私が、冠水した道路への向き合い方、走行中に水に遭ったときの避難の考え方、水没した車からの脱出手順、そして事前にできる備えまでを順番にお伝えします。むやみに脅すためではなく、「今日からできる一歩」を持ち帰っていただくための内容です。情報は2026-06-27時点で確認したものをもとにしています。

車の水没はなぜそんなに危険なのでしょうか?

短く言うと、見た目より水が深く、車の制御が早い段階で効かなくなるからです。

国土交通省の注意喚起によると、水深が車の床面を超えると危険な状態とされ、わずか10cm程度でもブレーキやハンドルの操作に支障が出ることがあります。さらに水深が30cmほどになるとエンジンが止まりやすくなり、ドアの下端を超えるあたりから外側の水圧でドアが開けにくくなっていきます。

注意したいのは、路面の水は濁っていて深さが見えないという点です。「浅そうだから大丈夫」という判断が、いちばん危ない場面につながります。水深が浅く見えても、流れがあれば人も車も押し流されることがあります。命を守るうえでの基本は、深さを軽く見ないことだと私は考えています。

もう一つ知っておきたいのが、水位の上がり方の速さです。ゲリラ豪雨のような短時間の大雨では、数分のあいだに足元から床面、そしてドアの高さへと水が達することがあります。「さっきまで通れた道」が、戻ってきたときには深く冠水していることも珍しくありません。だからこそ、いったん危ないと感じたら、状況が悪化する前に早めに引き返す判断が大切になります。私はこの「早めに」を、自分の中で最優先の合言葉にしています。

冠水した道路やアンダーパスには進入してよいのでしょうか?

進入しない、が答えです。これはこの記事でいちばんお伝えしたいことです。

アンダーパス(線路や道路の下をくぐる、くぼんだ道路)は、大雨のときに周囲から水が一気に集まりやすく、短時間で深く冠水します。国土交通省やJAFも、アンダーパスや冠水した道路には近づかないことを繰り返し呼びかけています。立体交差のくぼみは外から見ると水深が分かりにくく、進入してから動けなくなる立ち往生が起きやすい場所です。

迂回は遠回りに感じるかもしれません。それでも、冠水路を避けて高い道を選ぶ判断が、結果的にいちばん安全で早い帰り道になります。「行けるかも」ではなく「入らない」を、あらかじめ自分の中で決めておくことをおすすめします。

走行中に冠水に出くわしたらどう動けばよいのでしょうか?

無理に前進せず、水位が浅いうちに高い場所へ移動するのが基本です。

前方の道路が冠水し始めていると気づいたら、速度を落として安全に停止できる場所を探します。可能であれば、来た道を戻る、立体駐車場の上層階や高台の駐車スペースなど、少しでも高い場所へ車を移します。エンジンや車内に水が入り始める前に動くことが大切で、ためらうほど選択肢は狭くなります。

そして、ここが命を分ける判断です。水位が上がり、車の操作が効かない、ドアやエンジンに水が及んでいると感じたら、車に固執しないでください。危険なときは車を置いて、徒歩で高台や近くの頑丈な建物の上階へ避難します。車は保険や修理で取り戻せますが、命は取り戻せません。「車より自分と同乗者の命」を、迷う前に思い出してください。

車が水に浸かって閉じ込められそうなときはどう脱出すればよいのでしょうか?

シートベルトを外し、まだ水面より上にある窓から脱出するのが基本手順です。

外側の水圧でドアが開かなくなることがあるため、ドアにこだわらず、早めに窓からの脱出を考えます。電動の窓(パワーウインドウ)は水で電気系統が止まると動かなくなることがあるので、開くうちに早めに開けておくと安心です。窓が開かないときのために、車に常備しておきたいのが緊急脱出用ハンマーとシートベルトカッターです。

国土交通省の資料によると、脱出用ハンマーで割るのは側面または後方の窓ガラスです。フロントガラスや一部車種の前席側面ガラスは割れにくい合わせガラスのことがあるためです。ハンマーを使うときは、ガラスの中央ではなく四隅に近い部分を狙うと割れやすいとされています。万一どうしても窓もドアも開かない場合は、車内に少し水が入って車内外の水位差が小さくなると、ドアにかかる水圧が下がって開けやすくなることがあります。落ち着いて、開けられる出口を探してください。

脱出用ハンマーは、いざというときに手が届かなければ意味がありません。グローブボックスの奥や後部トランクではなく、運転席から片手で取れる場所に固定しておくことをおすすめします。家族で乗ることが多い方は、後部座席からも届く位置にもう一つ備えておくと安心です。道具は「持っている」だけでなく「すぐ使える場所にある」状態にしておくことが大切だと、私は実感しています。

状況別 早見表(冠水・水没への対応)

状況 やること 避けること
前方が冠水し始めている 速度を落とし、入らずに迂回する 「浅そう」で進入する
道がくぼんだアンダーパス 近づかない・引き返す 様子を見ながら突入する
走行中に水位が上がってきた 浅いうちに高い場所へ車を移す その場で前進を続ける
車内に水が入り危険 車を置いて徒歩で高台へ避難 車にとどまり続ける
ドアが開かない 窓から脱出・脱出用ハンマーで側面窓 フロントガラスを割ろうとする

脱出手順のメモ

  1. あわてず深呼吸をして、シートベルトを外す。
  2. 同乗者、特に子どもの安全を確認する。
  3. 水面より上にある窓を開けて外へ出る。
  4. 窓が開かなければ脱出用ハンマーで側面か後方の窓を割る。
  5. 車外に出たら流れに逆らわず、近くの高い場所へ移動する。

水が引いたあと、車のエンジンをかけてもよいのでしょうか?

かけないでください。これも命と安全に直結する重要なポイントです。

水に浸かった車は、外から見て問題がなさそうでも、内部で電気系統がショートして感電や車両火災につながるおそれがあります。国土交通省も、浸水・冠水した車両はエンジンをかけずに販売店や整備工場などへ連絡するよう案内しています。

特に注意したいのが、電気自動車やハイブリッド車です。高い電圧のバッテリーを積んでいるため、むやみに車体やケーブルに触れず、ただちにディーラーや専門業者に相談してください。「動くか確認したい」という気持ちは分かりますが、再始動はやめて、点検は必ずJAFやディーラー、専門の整備業者に任せるのが安全です。水没した車を自分で動かそうとしないでください。

事前にできる備えには何があるのでしょうか?

冠水しやすい場所の把握と、脱出道具の常備、この二つが備えの中心になります。

まず、お住まいや通勤ルート周辺で、どこが冠水しやすいかを知っておくことが大切です。冠水想定やアンダーパスの位置は、各自治体や国土交通省が公開しているハザードマップ、道路冠水情報で確認できます。地域によって水のたまりやすい場所は異なるので、お住まいの自治体の最新情報を必ずご確認ください。

そのうえで、私が日頃から備えているのは次のような点です。

  • 緊急脱出用ハンマーとシートベルトカッターを、手の届く場所に置いておく。
  • 大雨や台風が予想されるときは、早めに高台や立体駐車場の上層階へ車を移動しておく。
  • 大雨のときは不要不急の運転を控え、無理に出かけない判断をする。
  • ハザードマップで自宅・職場周辺の冠水しやすい場所を家族と共有しておく。

道具をそろえること自体が目的ではありません。「もしものとき、どこから逃げるか」を家族で一度話しておくことが、いちばんの備えだと感じています。なお、製品の性能には個体差があり、すべての状況での脱出を保証するものではありません。過信せず、まずは冠水路に入らない判断を最優先にしてください。

車の水没に備える保険はどうなっているのでしょうか?

一般的には、車両保険の補償範囲で水没による損害が対象になる場合があります。

水害による車両の損害は、車両保険に加入していれば補償の対象となることがありますが、契約しているプランや特約によって扱いは異なります。加入の有無や補償の範囲は、ご自身の保険証券や保険会社の窓口で確認しておくと安心です。いざというときに慌てないために、大雨シーズンの前に一度見直しておくことをおすすめします。

ただし、保険はあくまで車の損害に対する備えです。命を守る行動の代わりにはなりません。補償があるからと冠水路へ進入するようなことは避けてください。

子どもや高齢者と一緒のときはどう気をつければよいのでしょうか?

避難に時間がかかる前提で、いつもより早めに動くことが大切です。

小さな子どもやチャイルドシート、高齢のご家族と一緒のときは、シートベルトを外して外へ出るまでに余分な時間がかかります。だからこそ、冠水しそうな状況に近づかないこと、そして危険を感じたら早い段階で安全な場所へ移ることが、より重要になります。

車内では、後部座席の子どもの様子を声かけで確認し、避難するときは大人が一人ひとり手を引いて誘導します。あらかじめ「車から逃げるときは窓から」「ハンマーはここにある」と家族で共有しておくと、いざというときの動きが落ち着いたものになります。

よくある質問

Q. 冠水した道路は、水深が何cmまでなら通れますか。
A. 「ここまでなら安全」という線引きで進入するのはおすすめしません。国土交通省は水深が車の床面を超えると危険としており、濁った水は深さが分かりにくいためです。浅く見えても流れがあれば押し流されることがあるので、冠水路には入らない判断を基本にしてください。

Q. アンダーパスで動けなくなったらどうすればよいですか。
A. まず無理にエンジンで脱出しようとせず、水位が上がる前に車から離れ、徒歩で高い場所へ避難してください。ドアが開かないときは窓から、窓が開かないときは脱出用ハンマーで側面か後方の窓を割って脱出します。危険なときは車を置いて、命を最優先にしてください。

Q. 水が引いたら、すぐに車を動かしてもよいですか。
A. 動かさないでください。水に浸かった車はエンジンをかけると感電や車両火災のおそれがあります。再始動はせず、JAFやディーラー、整備工場などの専門業者に連絡して点検を受けてください。電気自動車やハイブリッド車は特にむやみに触れないことが大切です。

Q. 脱出用ハンマーはどの窓を割ればよいですか。
A. 側面または後方の窓ガラスです。フロントガラスや一部車種の前席側面は割れにくい合わせガラスのことがあるためです。手の届く場所にハンマーとシートベルトカッターを常備し、使い方を家族で確認しておくと安心です。

Q. どこが冠水しやすいかを事前に知る方法はありますか。
A. お住まいの自治体や国土交通省が公開するハザードマップ、道路冠水情報で確認できます。冠水しやすい場所は地域によって異なるので、最新の情報を確認し、通勤ルートや子どもの送り迎えの道で危険な場所を家族と共有しておきましょう。

まとめ|命を最優先に、今日からできる備えを

車の水没で何よりも大切なのは、冠水した道路やアンダーパスに入らないこと、そして危険なときは車を置いて命を守ることです。水没した車はエンジンをかけず、点検は必ず専門業者に任せる。脱出は窓から、ハンマーは手の届く場所に。事前にハザードマップで冠水しやすい場所を確認しておく。この一つひとつが、家族の安全につながります。

不安をあおりたいのではありません。できることを一つ準備しておくだけで、いざというときの落ち着きは大きく変わります。まずは今日、車の中に脱出用ハンマーがあるか、ハザードマップで自宅周辺の冠水しやすい場所がどこかを確認してみてください。

あわせて、水害時の避難のタイミングや家屋の浸水対策も知っておくと安心です。

🛡 マモルの備えメモ

私が毎年の大雨シーズン前に必ずするのは、脱出用ハンマーの置き場所の確認と、家族との「逃げ方」の共有です。道具をそろえて終わりにせず、「危ないと思ったら車を置いて逃げる」を口に出して決めておく。それだけで、いざというときの一歩がぐっと軽くなります。今日できる一歩から、一緒に備えていきましょう。


参考にした主な一次情報(2026-06-27確認)

  • 国土交通省「水深が床面を超えたら、もう危険!」自動車のリコール・不具合情報
  • 国土交通省「自動車ユーザーの皆様へ ―車両からの脱出手順について―」
  • 国土交通省「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」
  • JAF「自動車が水没したときの対処と脱出方法とは?」
  • 各自治体・国土交通省 道路冠水注意箇所マップ/ハザードマップ

免責事項:本記事は防災に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の状況での安全や脱出を保証するものではありません。実際の災害時は、お住まいの自治体や気象庁、警察・消防などの最新の指示・情報に従ってください。事故やけが、緊急の際は119番・110番へ連絡してください。製品の効果には個体差があり、本記事は特定製品の性能を保証するものではありません。