赤ちゃんの避難の注意点は?防災士が伝える備えと持ち物9つ【2026年版】
赤ちゃん連れの避難で気をつけたいことを防災士マモルがまとめました。抱っこ紐で両手を空ける、保温、持ち物チェック表、避難所での配慮、体調の変化への向き合い方まで、今日からできる一歩をやさしく解説します。
「もし今、地震が来たら、この子を抱えてどこへ逃げればいいんだろう」。赤ちゃんを腕に抱きながら、ふとそんな不安がよぎったことはありませんか。
私は防災士で、二児の親です。上の子が生まれたばかりのころ、夜中の小さな揺れで飛び起き、暗闇の中で何も準備できていない自分に気づいて、しばらく眠れなくなったことがあります。だからこそ、赤ちゃん連れの避難には、大人だけのときとはちがう注意点があると、身をもって感じてきました。
この記事では、赤ちゃんと一緒に避難するときの注意点を、脅すためではなく「今日からできる一歩」として整理します。完璧な備えを目指すと苦しくなります。まずは抱っこ紐をひとつ玄関に置く、それくらいの小さな一歩から始めていきましょう。
なお、赤ちゃんの体調や授乳、お薬に関わる判断は、この記事ではなく、かかりつけの小児科医・助産師・保健師さんに相談していただくのが基本です。記事では一般的な備えの考え方をお伝えします。
最新確認日: 2026-06-27。乳幼児や母子への支援、避難所での配慮の内容は自治体によって異なります。お住まいの市区町村の防災情報で最新の内容を必ずご確認ください。
赤ちゃんの避難は大人とどう違うのでしょうか?
赤ちゃんの避難は、体温調節が未熟で、自分で危険を避けられず、ミルクやおむつなど専用の備えが要る点が大人と大きく異なります。
赤ちゃんは体が小さく、体温を一定に保つ力がまだ十分に育っていません。寒さにも暑さにも大人より影響を受けやすいといわれます。また、自分で逃げることも、不調を言葉で伝えることもできません。だからこそ、まわりの大人が先まわりして守る必要があります。
避難そのものの考え方は、大人と共通する部分もあります。ただ、赤ちゃんがいる場合は「両手をどう空けるか」「専用の持ち物をどうそろえるか」「体調の変化にどう気づくか」という三つの視点が、特に大切になってきます。順番に見ていきましょう。
避難するときは抱っこ紐とベビーカーのどちらがよいですか?
がれきや段差、階段の多い避難経路では、両手が空く抱っこ紐のほうが動きやすい場面が多いとされています。
災害時の道は、ふだんと様子が変わることがあります。建物や塀が崩れたり、地面に段差やひびができたり、人が一斉に動いて混み合ったりします。こうした場面では、ベビーカーは押しにくく、避けて通れない段差や階段で立ち往生してしまうことも考えられます。
内閣府防災や母子の防災ノートなどでも、こうした状況では抱っこやおんぶで避難する考え方が紹介されています(出典は記事末尾に記載)。抱っこ紐があると、赤ちゃんを胸やお腹で支えながら両手を空けられるため、転びそうなときに手をつくこともできます。
首がまだすわっていない赤ちゃんは、頭と首をしっかり支えられる抱き方を意識します。首がすわっている赤ちゃんは、視界が確保しやすいおんぶも選択肢になります。どちらが向いているかは月齢やお子さんの状態によって変わるので、ふだんから使い慣れておくことをおすすめします。
ベビーカーがまったく使えないわけではありません。在宅で過ごす場合や、道の状況が落ち着いてからの移動には役立つこともあります。状況に応じて使い分けられるよう、抱っこ紐を「すぐ手に取れる場所」に置いておくと安心です。
抱っこでの避難を少しでも安全にする工夫はありますか?
足元を確認しながらゆっくり進み、赤ちゃんの顔まわりに空間を保ち、防寒や雨対策で体を守ると、より安全に近づきます。
抱っこ紐で赤ちゃんを支えていると、自分の足元が見えにくくなりがちです。あわてて走ると転倒の危険が高まります。揺れがおさまった後の避難では、できるだけ足元を確認しながら、一歩ずつ進むことを心がけてください。
赤ちゃんの顔が布や大人の体に押しつけられて、呼吸がしにくくならないよう、口や鼻まわりに少し空間を保つことも大切です。だっこ紐の正しい装着位置を、ふだんから確認しておきましょう。
寒い時季や雨の日は、おくるみやブランケットで体をくるみ、抱っこ紐の上から大人の上着で包むようにすると、保温と雨よけになります。ただし顔まで覆ってしまわないよう注意します。落ち着いたら、赤ちゃんが暑くなりすぎていないか、汗をかいていないかもこまめに確かめてください。
赤ちゃんの避難の持ち物には何を準備すればよいですか?
液体ミルクや使い慣れたミルク、哺乳びん、おむつ、おしりふき、着替え、母子健康手帳、常備薬などを、ふだんの分とは別に多めに用意しておくと安心です。
赤ちゃん用の物資は、避難所ですぐに手に入るとは限りません。災害時の乳幼児の栄養支援に関する公的な手引きでも、6か月未満の赤ちゃんほど専用の備えが大切だと示されています(出典は記事末尾に記載)。
下のチェック表は、赤ちゃん連れの避難で持っておきたいものと、避難前に確認したいことの一例です。すべてを一度にそろえる必要はありません。できるところから埋めていきましょう。
赤ちゃんの避難 持ち物・注意チェック表
| 区分 | 内容 | 確認 |
|---|---|---|
| 栄養 | 液体ミルク、または使い慣れた粉ミルク(月齢に合うもの) | □ |
| 栄養 | 哺乳びん、または使い捨て哺乳びん・乳首 | □ |
| 栄養 | 飲み水(調乳や水分補給用に多めに) | □ |
| 衛生 | おむつ(多めに)、おしりふき、ビニール袋 | □ |
| 衛生 | 着替え、ガーゼ、タオル、おくるみ | □ |
| 健康 | 母子健康手帳、健康保険証や医療証の写し | □ |
| 健康 | 常備薬、体温計、お薬手帳 | □ |
| 移動 | 抱っこ紐(首すわり前後で合うもの)、防寒用ブランケット | □ |
| 安心 | 使い慣れたおもちゃ、おしゃぶり、ガーゼなど | □ |
| 確認 | 避難経路と避難先、自治体の母子向け支援情報 | □ |
液体ミルクは、お湯がなくても常温で飲ませられる場面があり、災害時に役立つといわれています。ただし、月齢に合うか、海外製の支援物資の場合は表示が合っているかなど、確認すべき点があります。お子さんに合うかどうかは、かかりつけの小児科医や助産師さんに相談してください。液体ミルクの備蓄については、別記事でくわしく扱う予定です。
避難所で赤ちゃんと過ごすときに気をつけることは何ですか?
授乳やおむつ替えの場所を早めに確認し、感染症対策をして、まわりへ一声かけながら過ごすと、お互いに過ごしやすくなります。
避難所では、多くの人が同じ空間で生活します。授乳やおむつ替えのスペースが用意されているかは、自治体や避難所によって異なります。着いたら早めに運営の方に確認し、難しい場合はパーティションやタオルで仕切るなど、できる工夫を相談してみてください。
人が多く集まる場所では、感染症が広がりやすくなることがあります。手洗いや手指の消毒、こまめな着替え、使ったおむつの密閉など、できる範囲での衛生対策を意識しましょう。赤ちゃんは抵抗力がまだ弱いといわれるので、体調を崩している人とはできるだけ距離を保てると安心です。
おむつ替えのあとのごみは、においや衛生面に配慮して密閉して処理します。まわりの方に「赤ちゃんがいてご迷惑をおかけします」と一声かけておくと、お互いに気持ちよく過ごしやすくなります。
赤ちゃんが泣いてしまうときはどうすればよいでしょうか?
赤ちゃんが泣くのは自然なことです。ご自身を責めず、抱っこや授乳で安心させながら、まわりと声をかけ合える雰囲気をつくっていきましょう。
慣れない環境では、赤ちゃんがいつもより泣くことがあります。静かにしなければと張りつめて、保護者の方が追いつめられてしまうことも少なくありません。けれど、泣くのは赤ちゃんが不安や不快を伝える大切なサインです。
抱っこやおんぶで体を密着させたり、授乳やおしゃぶり、使い慣れたガーゼで落ち着かせたりと、できることを試してみてください。それでも泣きやまないときもあります。そんなときは、ご自身を責めないでほしいと私は思います。
避難所では「赤ちゃんが泣いても責めない」雰囲気づくりも大切です。もし可能なら、運営の方に相談して、赤ちゃん連れや小さな子のいる家庭が近くで過ごせるよう配慮してもらえることもあります。声をかけ合える環境は、保護者の方の気持ちもやわらげてくれます。
赤ちゃんの体調が心配なときはどこに相談すればよいですか?
赤ちゃんの体調や発熱、授乳、お薬のことは、かかりつけの小児科医・助産師・保健師に相談するのが基本です。
避難生活では、環境の変化や疲れから、赤ちゃんの体調が崩れやすくなることがあります。発熱、下痢、食欲の変化、肌の様子など、ふだんとちがう点に気づいたら、早めに専門家に相談しましょう。被災地では小児科医や保健師が巡回したり、相談窓口が設けられたりすることもあります。
授乳の方法やお薬を飲ませてよいかといった判断は、この記事ではお伝えできません。月齢や体の状態によって対応が変わるため、必ず医師や助産師、保健師さんなど専門家に確認してください。母子健康手帳やお薬手帳を持っていると、相談がスムーズになります。
赤ちゃんは、自分の不調を言葉で伝えられません。だからこそ、保護者の「いつもとちがう」という感覚はとても大切な手がかりになります。気になることは遠慮せず、専門家に相談してください。
赤ちゃんのどんな様子のときに急いで受診すべきでしょうか?
ぐったりして反応が弱い、水分が取れない、強い発熱が続く、けいれん、呼吸が苦しそうといった様子があるときは、ためらわず早めに医療機関・小児科を受診し、緊急時は119番に連絡してください。
赤ちゃんは体が小さく、水分が不足する状態が大人より早く進むことがあるといわれます。とくに月齢の低い赤ちゃんの発熱や、ぐったりして元気がない様子は、早めの受診が大切とされています(出典は記事末尾に記載)。
下のような様子が見られたら、早めの対応を検討してください。これは医療の判断ではなく、相談・受診のきっかけとして参考にしてください。
- ぐったりして、抱いても反応が弱い
- 母乳やミルク、水分をほとんど受けつけない
- おしっこが長時間出ていない、唇や口の中が乾いている
- 強い発熱が続く、けいれんがある
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い
判断に迷うときは、こども医療電話相談「#8000」などの窓口を利用する方法もあります。実施時間や内容は地域で異なるため、お住まいの自治体で確認しておくと安心です。命に関わると感じたときは、迷わず119番に連絡してください。
ふだんからできる赤ちゃんの避難の備えは何ですか?
抱っこ紐を取りやすい場所に置き、赤ちゃん用の持ち出し品をまとめ、避難経路と自治体の母子支援を確認しておくと、いざというとき動きやすくなります。
備えは、災害が起きてからでは間に合いません。けれど、難しく考える必要もありません。まずは抱っこ紐をひとつ、玄関や寝室など、すぐ手に取れる場所に置くことから始めてみてください。
次に、先ほどのチェック表を参考に、赤ちゃん用の持ち出し品を小さなバッグにまとめておきます。おむつやおしりふき、着替えなどは消費期限やサイズが変わっていくので、季節の変わり目などに見直すと安心です。母子健康手帳や保険証の写しも入れておきましょう。
最後に、自宅から避難先までの経路を、赤ちゃんを抱っこした想定で一度歩いてみると、段差や危ない場所に気づけます。自治体によっては、乳幼児や妊産婦向けの支援や福祉避難所の情報を出していることがあります。最新の内容を、お住まいの市区町村で確認しておきましょう。子どもの防災で必要なものは、成長に合わせて変わっていきます。
よくある質問
Q. 赤ちゃんの避難はベビーカーと抱っこ紐のどちらがよいですか。
A. がれきや段差、階段の多い経路では、両手が空く抱っこ紐のほうが動きやすい場面が多いとされています。ベビーカーは在宅避難や道が落ち着いた後の移動に役立つこともあるので、状況に応じて使い分けられるよう、抱っこ紐をすぐ手に取れる場所に置いておくと安心です。
Q. 赤ちゃんの避難の持ち物は何を優先すればよいですか。
A. 液体ミルクや使い慣れたミルク、哺乳びん、おむつ、おしりふき、着替え、母子健康手帳、常備薬などが基本です。本文のチェック表を参考に、ふだんの分とは別に多めに用意し、季節ごとに見直すことをおすすめします。
Q. 避難所で授乳やおむつ替えはどうすればよいですか。
A. 着いたら早めに運営の方にスペースの有無を確認し、難しい場合はパーティションやタオルで仕切るなど、できる工夫を相談してみてください。配慮の内容は自治体や避難所で異なるため、お住まいの地域の情報も確認しておくと安心です。
Q. 避難中に赤ちゃんが泣いてしまうのが心配です。
A. 赤ちゃんが泣くのは自然なことなので、ご自身を責めないでください。抱っこや授乳、使い慣れたガーゼなどで安心させながら、まわりと声をかけ合える雰囲気づくりを心がけましょう。
Q. 避難中に赤ちゃんの体調が悪くなったらどうすればよいですか。
A. 体調や発熱、授乳、お薬のことは、かかりつけの小児科医・助産師・保健師に相談するのが基本です。ぐったりする、水分が取れない、強い発熱が続くなどの様子があれば、早めに医療機関・小児科を受診し、緊急時は119番に連絡してください。
赤ちゃん連れの避難は、考え出すと不安が尽きないかもしれません。でも、すべてを一度に整える必要はありません。今日は抱っこ紐をひとつ玄関に置く、明日はおむつを少し多めに買い足す。そんな小さな一歩の積み重ねが、いざというときのあなたと赤ちゃんを助けてくれます。私も親として、一緒に少しずつ備えていきたいと思っています。
なお、赤ちゃんの体調・発熱・授乳・お薬に関することは、必ずかかりつけの小児科医・助産師・保健師など専門家にご相談ください。本記事は一般的な備えの考え方をまとめたもので、医療上の判断を示すものではありません。緊急時は迷わず119番に連絡してください。
🛡 マモルの備えメモ
まずは「抱っこ紐をすぐ取れる場所に置く」「赤ちゃん用の持ち出し品をひとつのバッグにまとめる」、この二つから始めてみませんか。お住まいの自治体の母子向け防災情報も、あわせて確認しておくと安心です。
出典・参考
- 内閣府防災「あかちゃんとママを守る防災ノート」関連資料(bousai.go.jp)
- こども家庭庁・厚生労働省(母子保健)災害時の母子支援に関する情報
- 日本小児科学会「乳児用調製液体乳(液体ミルク)の使用に関しての注意点」
- 日本栄養士会「災害時における乳幼児の栄養支援の手引き」