🛡防災の備えメモ

要配慮者の避難|高齢者・障害のある人の備えと個別避難計画【2026年版】

高齢者・障害のある人・乳幼児・妊婦など要配慮者の避難を防災士がやさしく解説。早めの避難の目安となる警戒レベル3「高齢者等避難」、避難行動要支援者名簿、個別避難計画、福祉避難所、必要な備えを種類別チェック表で整理します。

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「高齢の親を、いざというときどうやって避難させればいいのだろう」「障害のある家族と一緒に、無事にたどり着けるだろうか」。災害の備えを考えるとき、こうした不安を抱える方はとても多いです。

私は防災士で、二人の子どもを育てる親でもあります。地域の防災活動の中で、高齢のご家族や障害のあるご家族と暮らす方から、避難への迷いや心配をたくさん聞いてきました。「自分たちだけで何とかしなければ」と一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。

先にいちばん大切なことをお伝えします。要配慮者の避難で何より大事なのは「早めに動くこと」と「一人で抱え込まないこと」です。 避難に時間がかかる方は、警戒レベル3「高齢者等避難」が出た段階で避難を始めるのが目安になります。そして、名簿や個別避難計画、福祉避難所といった仕組みは、お住まいの自治体や地域包括支援センターに相談しながら整えていけます。

ただし、必要な支援の内容は人によって大きく異なります。同じ「高齢者」「障害のある人」でも、体の状態も暮らし方もさまざまです。この記事では一般的な考え方を整理しますが、具体的な備えはご本人やご家族の状況に合わせて、専門家に相談しながら決めていってください。

本記事の最新確認日: 2026-06-27。避難行動要支援者名簿・個別避難計画・福祉避難所の運用は自治体によって異なり、制度改正もあり得ます。実際の手続きや支援については、お住まいの自治体・地域包括支援センターが案内する最新情報を必ずご確認ください。

要配慮者とは誰のこと?

要配慮者とは、高齢者・障害のある人・乳幼児・妊婦・病気のある人・外国人など、災害時に特に配慮を必要とする人のことです。災害対策基本法で定められた言葉で、避難や情報の入手、避難生活で支援が必要になりやすい方を広く指します。

具体的には、次のような方が含まれます。

  • 高齢の方(特に介護が必要な方や一人暮らしの方)
  • 体が不自由な方、目や耳に障害のある方、内部障害のある方
  • 知的障害・精神障害・発達障害のある方
  • 妊娠中の方、乳幼児を連れた方
  • 持病があり医療的なケアや薬が欠かせない方
  • 日本語での情報入手がむずかしい外国人の方

ここで気をつけたいのは、要配慮者だからといって「自分では何もできない人」ではない、ということです。多くの方は、必要な支援が少し加われば、自分の力で行動できます。私が地域でお伝えしているのは、「できないことを数えるより、何があれば動けるかを一緒に考える」という姿勢です。

そして、要配慮者のうち、自力での避難がむずかしく特に支援が必要な方を「避難行動要支援者」と呼びます。次の章でくわしく見ていきます。

避難行動要支援者名簿とは何ですか?

避難行動要支援者名簿とは、自力で避難するのがむずかしく支援が必要な方の情報をまとめ、市町村が作成する名簿のことです。災害が起きたとき、地域の支援者が「誰が支援を必要としているか」を把握し、安否確認や避難の手助けに使うためのものです。

この名簿は、平成25年(2013年)の災害対策基本法の改正で、市町村に作成が義務づけられました。東日本大震災で高齢の方や障害のある方の被害が大きかったことが、この仕組みのきっかけです。内閣府の資料では、令和4年時点でほぼすべての市町村が名簿を作成しています。

名簿に載るかどうかは、自分や家族から自治体に相談して登録を申し出ることもできます。「うちの家族は対象になるだろうか」と迷ったら、まずはお住まいの自治体の防災担当や福祉担当の窓口に問い合わせてみてください。地域包括支援センターでも相談に乗ってもらえます。

ひとつ知っておきたいのは、名簿に載っていても、災害時に必ず誰かが助けに来てくれると保証されているわけではない、という点です。地域の支援者自身も被災することがあるからです。名簿はあくまで支援の出発点で、それと合わせて自分や家族の備えを整えておくことが大切になります。

個別避難計画はどうやって作るの?

個別避難計画とは、避難行動要支援者の一人ひとりについて、「誰が」「どうやって」「どこへ」避難を支援するかを具体的に決めておく計画のことです。名簿が「対象者のリスト」だとすれば、個別避難計画は「その人専用の避難の段取り」にあたります。

この計画は、令和3年(2021年)の災害対策基本法の改正で、市町村の努力義務となりました。台風や豪雨で高齢の方や障害のある方の犠牲が続いたことを受け、より実効性のある支援にするために設けられた仕組みです。内閣府によれば、令和4年時点で計画づくりは多くの市町村で途上にあり、すべての対象者で完成しているわけではありません。

個別避難計画には、たとえば次のような内容が書き込まれます。

  • 避難を支援する人(地域の支援者・近所の方・親族など)
  • 避難する場所と、そこまでの経路や移動手段
  • 必要な配慮(車いす、付き添い、声かけの方法、医療的なケアなど)
  • 服用している薬や、欠かせない医療機器の情報
  • 緊急時の連絡先

作成は、ご本人やご家族、自治体、地域包括支援センター、福祉やケアの専門職、地域の支援者などが一緒に話し合って進めるのが基本です。「自分で作らなければ」と気負う必要はありません。まずは自治体の窓口やケアマネジャー、地域包括支援センターに「個別避難計画を作りたい」と相談するところから始めてみてください。

内部リンク(公開時に接続): 高齢のご家族の備えは 、障害のあるご家族の備えは でくわしく解説しています。

なぜ早めの避難が大切なの?

避難に時間がかかる方は、警戒レベル3「高齢者等避難」が出た段階で避難を始めるのが目安です。早めに動くことで、雨や風が強まる前、暗くなる前に、安全に避難を終えやすくなるからです。

警戒レベル3「高齢者等避難」は、まさに避難に時間のかかる方が動き出すための情報です。高齢の方、体の不自由な方、小さな子どもがいる家庭などが対象になります。ここで避難を始めれば、移動に時間がかかっても、危険が高まるレベル4の前に安全な場所へ着ける可能性が高まります。

車いすでの移動、付き添いながらの歩行、医療機器を持っての避難は、思った以上に時間と人手がかかります。私自身、地域の避難訓練で車いすの誘導を体験して、平らな道でもふだんの何倍も時間がかかることを実感しました。だからこそ、健康な人が動くタイミングと同じでは間に合わないことがあるのです。

内部リンク(公開時に接続): 警戒レベルの意味と避難タイミングは でくわしく解説しています。

ただし、レベル3を待たなければいけないわけではありません。大雨の予報が出ていて、夜間の移動が危険になりそうなら、明るいうち・雨が弱いうちに早めに避難するほうが安全です。「空振りでもいい」という気持ちで、ためらわず動いてください。

要配慮者の種類別に必要な配慮は?

必要な配慮は人によって異なりますが、種類別の傾向を知っておくと、わが家の備えを考えるときの手がかりになります。下の表は一般的な目安です。ご本人の状態に合わせて、専門家とも相談しながら調整してください。

種類別の配慮と早めの避難チェック表

対象となる方 避難で気をつけたいこと 早めの避難の目安 備えておきたいもの
介護が必要な高齢の方 移動に時間がかかる・体調が変わりやすい レベル3で開始。付き添いを確保 薬・お薬手帳・歩行補助具・予備の介護用品
体が不自由な方 段差や階段、車いすでの経路に注意 レベル3で開始。移動を支援する人を確保 車いす・補助具・予備のバッテリー
目や耳に障害のある方 情報や周囲の状況が伝わりにくい 情報が届いた時点で早めに 筆談具・補聴器の予備電池・白杖など
持病・医療的ケアのある方 薬や医療機器が欠かせない 余裕をもって早めに 薬・医療機器・予備電源・主治医の連絡先
妊婦・乳幼児を連れた方 長距離の移動や混雑が負担になりやすい レベル3で開始 母子手帳・ミルク・おむつ・抱っこひも
日本語がむずかしい外国人の方 情報の入手や手続きで支援が必要 情報が届いた時点で早めに やさしい日本語の資料・多言語の防災情報

この表はあくまで出発点です。たとえば同じ「障害のある方」でも、必要な支援はまったく違います。表を見ながら「わが家の場合はどうだろう」とご本人・ご家族で話し合い、足りないものを書き加えていってください。

医療的なケアや薬の備えはどうすればいいの?

薬や医療機器が欠かせない方は、主治医・機器のメーカー・電力会社に、災害時の対応を前もって相談しておくことが大切です。専門的な判断が必要なため、自己判断で備えを決めるのは避けてください。

具体的には、次のような相談をしておくと安心です。

  • 服用している薬を、何日分くらい予備として持っておけばよいか(主治医・薬剤師に相談)
  • 在宅で使う医療機器が停電したとき、どう対応すればよいか(機器のメーカーに相談)
  • 人工呼吸器など電源が欠かせない機器がある場合の、停電時の連絡や優先対応(電力会社に事前相談)

私が地域でお会いした方の中にも、停電時の備えを電力会社に事前登録していて安心できた、という方がいました。在宅で電源を必要とする医療機器を使っている場合は、契約している電力会社に「災害時・停電時の対応」を一度確認しておくことをおすすめします。

お薬手帳は、避難先や避難所での医療を受けるときに役立ちます。コピーを防災用の持ち出し袋に入れておく、スマホで写真を撮っておくなど、すぐ取り出せるようにしておくと安心です。緊急で体調が急変したときは、ためらわず119番に連絡してください。

福祉避難所はどんなところ?

福祉避難所とは、一般の避難所での生活がむずかしい要配慮者のために、特別な配慮を備えた避難所のことです。高齢の方や障害のある方が、バリアフリーの設備や専門の支援を受けながら過ごせるよう用意されています。

ただし、福祉避難所の数や運営の仕方は自治体によって大きく異なります。最初から福祉避難所に直接行ける場合もあれば、まず一般の避難所に行き、そこから必要に応じて移ってもらう運用の場合もあります。どこが福祉避難所に指定されているか、どう利用するかは、平常時にお住まいの自治体に確認しておくと安心です。

福祉避難所がすぐに開設されない、あるいは満員になることもあり得ます。そのため、福祉避難所だけをあてにするのではなく、安全な親戚・知人の家や、設備の整った別の避難先も合わせて考えておくと、選択肢が広がります。

私がいつもお伝えしているのは、「行き先を一つに絞らず、いくつか候補を持っておく」ことです。当日の状況で最善の場所が変わることもあるので、複数の選択肢を家族で共有しておいてください。

避難の手段や付き添いはどう準備する?

避難の手段は、車いす・付き添い歩行・自家用車・地域の支援など、ご本人の状態に合わせて複数を想定しておくことが大切です。一つの方法だけに頼ると、当日その手段が使えないときに動けなくなってしまうからです。

準備のポイントを整理します。

  • 誰が付き添い、誰が支援するかを、平常時に決めて共有しておく
  • 車いすや歩行補助具は、すぐ持ち出せる場所に置き、点検しておく
  • 移動経路に段差や階段がないか、別ルートはあるかを下見しておく
  • 自家用車で避難する場合は、浸水のおそれがある道や渋滞のリスクも考えておく
  • 一人での支援がむずかしいときは、近所の方や地域の支援者にも声をかけておく

支援する人を一人に固定すると、その人が不在のときに動けません。複数の支援者を想定しておくと安心です。これは個別避難計画づくりの中で、自治体や地域包括支援センターと一緒に整理していけます。

無理に一人で抱え込まないでください。地域の民生委員や自治会、地域包括支援センターは、こうした相談に応じる役割を担っています。「助けて」と早めに声を上げておくことが、いざというときの安全につながります。

よくある質問(FAQ)

Q. 要配慮者と避難行動要支援者は何が違うのですか。
A. 要配慮者は、高齢者・障害のある人・乳幼児・妊婦・病気のある人・外国人など、災害時に配慮を必要とする人を広く指す言葉です。そのうち、自力での避難がむずかしく特に支援が必要な方を避難行動要支援者と呼びます。名簿の対象や登録については、お住まいの自治体や地域包括支援センターにご相談ください。

Q. 避難行動要支援者名簿に登録するにはどうすればよいですか。
A. お住まいの自治体の防災担当や福祉担当の窓口、または地域包括支援センターに相談して登録を申し出る方法があります。対象の考え方や手続きは自治体によって異なるため、最新の案内を自治体でご確認ください。名簿に載っても支援が保証されるわけではないので、自分や家族の備えも合わせて整えておくと安心です。

Q. 個別避難計画は自分で作らないといけないのですか。
A. 一人で作る必要はありません。ご本人・ご家族と、自治体、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどの専門職、地域の支援者が一緒に話し合って作るのが基本です。まずは自治体の窓口やケアマネジャーに「個別避難計画を作りたい」と相談してみてください。

Q. 在宅で医療機器を使っています。停電に備えて何をすればよいですか。
A. 医療機器の停電時の対応は機器のメーカーに、薬の予備は主治医や薬剤師に、電源が欠かせない機器がある場合は契約している電力会社に、それぞれ事前に相談しておくことをおすすめします。自己判断で備えを決めず、専門家に確認してください。体調が急変したときは119番に連絡してください。

Q. 福祉避難所には最初から行けるのですか。
A. 自治体によって運用が異なります。最初から福祉避難所に行ける場合もあれば、まず一般の避難所に行ってから移ってもらう場合もあります。どこが指定されているか、どう利用するかは平常時にお住まいの自治体に確認しておいてください。福祉避難所だけに頼らず、安全な親戚・知人の家など複数の選択肢を持っておくと安心です。

まとめ|早めに動き、一人で抱え込まない

最後に、いちばん大事なことを繰り返します。

  • 避難に時間がかかる方は、警戒レベル3「高齢者等避難」で避難を始めるのが目安
  • 必要な支援は人によって異なる。「できない人」ではなく「何があれば動けるか」で考える
  • 避難行動要支援者名簿や個別避難計画は、自治体・地域包括支援センターに相談して整えられる
  • 薬・医療機器の備えは主治医・メーカー・電力会社に、緊急時は119番に相談する
  • 福祉避難所や避難手段は一つに絞らず、複数の選択肢を家族で共有しておく

要配慮者の避難は、ご家族だけで完璧に準備しようとすると、とても大きな負担になります。だからこそ、自治体や地域の支援につながっておくことが、何よりの備えになります。今日、お住まいの自治体の窓口や地域包括支援センターに「うちの場合はどうすればいいか」を相談してみることから、一歩を始めてみてください。


🛡 マモルの備えメモ

私が地域でお配りしている「要配慮者の避難チェックシート」を、LINEで無料配布しています。ご家族の状態に合わせて、避難のタイミング・手段・必要な薬や機器・相談先を一枚で整理できるものです。「いざというとき、迷わず早めに動ける」状態を、いっしょに準備していきましょう。気になる方は、LINEから「要配慮者チェック」とメッセージを送ってください。

※本記事は2026-06-27時点の公開情報をもとに、防災士マモルが執筆しました。避難行動要支援者名簿・個別避難計画・福祉避難所の運用は自治体によって異なり、制度改正もあり得ます。薬や医療機器に関わる備えは主治医・メーカー・電力会社に、名簿や計画、福祉避難所については自治体・地域包括支援センターにご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の状況における避難の可否を保証するものではありません。

出典(一次情報)

  • 内閣府(防災担当)「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること」 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/yoshiensha.html
  • 内閣府(防災担当)「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/youengosya/h25/pdf/hinansien-honbun.pdf
  • 消防庁「避難行動要支援者の避難行動支援」 https://www.fdma.go.jp/mission/prepare/transfer/
  • 厚生労働省「災害時要援護者対策」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000123639.html